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リーゼント、特攻服、愛読書はビー・バップ…逮捕も経験したボクサー和氣慎吾(34)に聞く「なぜボクシングから“ヤンキー”が減ったのか」
text by
栗田シメイShimei Kurita
photograph byShimei Kurita
posted2022/04/02 11:00
34歳になった今も「世界」を諦めない和氣慎吾(34歳)。代名詞となっている“リーゼント”へのこだわりも語った
和氣のような“元ヤンボクサー”は絶滅危惧種なのだろうか。競技が洗練され、かつてのように「成り上がり」と呼べるようなサクセスストーリーに遭遇する機会も少なくなった。地下格闘技や総合格闘技団体が増え、アウトローたちの選択も多様化した現代社会において、あえてボクシングを選ぶ理由を挙げるのは難しいのかもしれない。和氣もそんな時代の変化を強く感じている。
「格闘技をやる子の根底には、絶対的に目立ちたいという感情がある。そういう子たちにとって、ボクシングは地味、総合格闘技とかは派手という印象になってきているんでしょうね。演出や入場パフォーマンスを見てもそれは明らかですから。今、K-1の武尊選手(キックボクシング)のスパーリングパートナーを務めていますが、やっぱりカリスマですよ。試合を何度も見に行っていますが、内容はもちろん、エンターテイメントとしての“魅せ方”も含めて全てがカッコいいです」
しかし、和氣はこうも思う。
「でも、ボクシングほど努力が形に表れるスポーツもないんじゃないか、と。日々の積み重ねが確実に技術として表れるし、練習は嘘をつかない。だからこそ根性がないと続けられない。周囲から理解されず、ろくなもんじゃないと煙たがられる不良はどの時代にも一定数いる。僕がリングで伝えられることがあるとすれば、人を殴って怒られてきた人間が、人を殴って喝采を浴びられる場所は他にはない、ということです」
和氣はまだ何者でもなかった“ツッパリ時代”の写真を大切に保管している。そこには自身の原点があり、故郷・岡山の期待を背負っていることを忘れない、という意味も込められている。
取材が終わると再び長渕剛の『ひまわり』がジムに流れた。和氣の表情は一変し、険しい眼光を浮かべリングに上る。その目の輝きは、初めてグローブを手に取った13歳の頃から少しも濁ることなく、純度を増しているようにすら映った。
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