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2試合“294球”完投、佐々木麟太郎封じにサヨナラ打…大阪桐蔭戦でも“連投”? ドラフト候補・米田天翼17歳が「本調子ではない」のに勝てる理由

posted2022/03/28 11:05

 
2試合“294球”完投、佐々木麟太郎封じにサヨナラ打…大阪桐蔭戦でも“連投”? ドラフト候補・米田天翼17歳が「本調子ではない」のに勝てる理由<Number Web> photograph by JIJI PRESS

投打で殊勲の働きだった市和歌山のエース米田。2005年2月13日生まれの17歳エースは大阪桐蔭相手に投げるのか

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間淳

間淳Jun Aida

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 大きな飛球が右中間へ伸びる――。

 1-1で迎えた9回1アウト一、二塁。市立和歌山のエースで7番打者の米田天翼は一塁ベースを回り、自身が放った打球を目で追っていた。外野の芝に白球が弾み、二塁ランナー森大輔がホームインしたのを確認すると、米田は雄叫びを上げながらナインのもとへ走る。ハイタッチして喜びを分かち合った。

「どんな球を打ったか覚えていないです。コンパクトにスイングすることだけ心掛けました」

 エース同士の緊迫した投手戦に終止符を打つサヨナラヒット。明秀日立のエース猪俣駿太が投じた外角低めのフォークをバットに乗せた。今大会8打席目での初安打は、高校に入って自身初のサヨナラ打となった。

 打席では必死に食らいつき、試合を決めた一打に興奮を抑えきれなかった米田だが――マウンドでは終始、冷静だった。打線を看板にしている明秀日立が描くイメージを逆手に取る投球だったのだ。

佐々木麟太郎を力でねじ伏せた高めのストレート

 米田は140キロを超える強い直球と、直球と球速が近いツーシームやカットボールで投球を組み立てるスタイルで、すでに今秋のドラフト候補の声も出ている。センバツ初戦の花巻東戦では、今大会注目の強打者・佐々木麟太郎や田代旭に直球を続け、力でねじ伏せた。

 特に、バットにかすらせもしない高めの直球は強烈な印象を残した。

 それもあって、明秀日立は米田の直球に力負けしないようにバットを短く持ち、内角に投げづらくするためにバッターボックスではホームベースギリギリに立っていた。だが、米田は明秀日立の策を想定していた。

「相手が直球を狙って打席に入るのは分かっていたので、緩急をうまく使おうと試合前から決めていました。直球で押したい気持ちもありましたが、本調子ではないという感覚もありました」

 プレーボール直後の1球目、米田が選択したのはカーブだった。明秀日立の1番・本坊匠の裏をかいて見逃しを奪うと、最後はカットボールで空振り三振に斬った。序盤の3イニングで打者11人に対し、米田は7人にカーブを投じた。直球を見せ球に使い、変化球が6割以上を占めていた。

相手指揮官も“普段と違う”と気づいていた投球

 4回はカーブの残像を生かして、直球を決め球に選んだ。1アウトから明秀日立の打線でカギを握る4番・武田一渓を低めの直球で空振り三振。5番・猪俣を内角の直球で見逃し三振に仕留めた。中盤以降はカットボールとツーシームを軸にして、バットの芯を外す投球スタイルへ変身したのだ。

 明秀日立の金沢成奉監督は、この日の米田が“普段と違う”と気付いており、1つの策を講じていた。

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