6回から、バッターボックスの立ち位置をホームベースギリギリからほぼ中央に変えるように指示したのだ。

　しかし、対戦前は米田の直球を強く意識しながら序盤の打席ではカーブを多投された明秀日立の打者が、ツーシームやカットボールといった動く球種に対応するのは難しかった。

　米田は「カットボールやツーシームをストレートの軌道に入れるイメージで投げれば、相手打者がバットを短く持っていても、芯を外れて凡打になると考えていました。動くボールが効果的だったと思います」と変幻自在の投球を振り返った。

　試合前に「何とか4、5点取れたら」と意気込んだ明秀日立の金沢監督は「もう少し花巻東戦のように力で勝負してもらえたら攻略できたかもしれません。的を絞らせない投球をされました」と脱帽するしかなかった。

　もう1つ、米田が明秀日立に刻み込んだ残像が最後まで生きた場面があった。

　3回1アウトから、米田は1番・本坊にヒットを許した。2番・平野太智へのカウントは3ボール1ストライク。足を使った攻撃が想定されるところで、米田は一塁ランナーの本坊をけん制で刺した。力のある直球で注目されている米田だが、実はクイックも得意としている。試合序盤に巧みなけん制を見せたことで、走者に大きなリードを取らせず、相手の走力を封じたのだ。

2試合連続完投、294球も大阪桐蔭相手に投げるのか

　投打で主役となった米田はチームをベスト8に導いた。

　憧れている1学年先輩のDeNA・小園健太が率いた昨年のチームを超えた。次戦の相手は優勝候補筆頭の大阪桐蔭である。初戦では大会屈指の左腕、鳴門・冨田遼弥の攻略に苦戦しながら、少ないチャンスを得点につなげて勝利をものにしており、隙のない試合運びは風格を感じさせた。

　わずかなミスも見逃さない大阪桐蔭が市和歌山にとって難敵なのは間違いない。

　米田は初戦の153球に続き、明秀日立相手に141球を投じて2試合連続完投している。さらに準々決勝は連戦となるため登板するかは不透明だが、マウンドに立つ準備はできているという。

1回戦で好投した際の米田　©Hideki Sugiyama

「ベスト8は強豪ばかりですが、エースとして最少失点、ここからは全イニング無失点に抑えるつもりで投げます」

　ともに完投した2試合で全く違う投球スタイルを披露した米田は次戦、どんな顔を見せるのだろうか。