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まさかの開幕3連敗…石井琢朗コーチは“どん底のベイスターズ”をどう変えるのか?「本当の意味で戦えるのはもう少し先。でも…」
text by
石塚隆Takashi Ishizuka
photograph byJIJI PRESS
posted2022/03/28 11:04
指導者として14年ぶりに古巣・横浜DeNAベイスターズに復帰した石井琢朗。選手時代の盟友・三浦大輔監督とともに24年ぶりのリーグ優勝を目指す
そして楽しみな存在が、もうひとりのショート候補である4年目の知野直人だ。オープン戦では内野のユーティリティーとして猛アピールをした知野は、積極的に起用されチームにふたりしかいない規定打席数に到達(打率.289)した。ファーストとしてスタメンに抜擢された開幕戦ではミスを犯してしまったが、石井コーチがかねてから選手たちに求めている「野球選手としてセンスを磨く作業、失敗を重ねそれをプラスに変えていく作業」を実践できた選手なのかもしれない。
「期待していた選手のひとりでもありましたし、森がああいう形で離脱して、そのチャンスを見事に掴んだ感はあります。オープン戦後半は、知野がラッキーボーイのような感じになりましたし、経験を積むことで対応力を身に付け、この春一番成長をした選手だと思いますね」
開幕戦での悔しい思いをいかに晴らすことができるのか今後の知野に刮目していきたい。
またソトや柴田がオープン戦で結果を出すと「石井コーチと取り組んできたことの成果です」とコメントを残していたのが印象的だった。石井コーチ本人は「たまたまハマっただけですよ」と謙遜をするが、確実に波及効果は出ているようだ。
24年ぶりの優勝へ「僕がやっていかなくちゃいけない仕事」
コーチ就任にあたってテーマとしていた「意識づけ」の一歩目は踏むことはできた。しかしながら、これが選手たちに腹落ちして血肉となるのは2~3年かかるのではないかと石井コーチは冷静に分析している。
「やっぱり石の上にも3年ですよ。それぐらいのスパンで考えているし、本当の意味で戦えるのはもう少し先のことだと思います。だけど……」
そう言った次の瞬間、石井コーチの言葉に熱がこもった。
「やっぱり今年、勝ちたいですよね。勢いでもいいから、勝ちたい。ハマりさえすればそのチャンスは絶対にあるでしょうし、どこのチームも目指しているのは結局そこ(優勝)なんですから」
24年ぶりのリーグ優勝と日本一を目指す上での現時点での課題は、ずばり「選手層にある」と石井コーチは断言する。
「知野や楠本泰史が育ってきて、ベンチのなかも少しは厚みが出てきたのかなと思っていたのですが、開幕戦からソトとオースティンの両外国人を欠いた戦いをすることになりました。やはり選手層の部分が、今後シーズンを通して課題になってくるのかなと。けどそこを弱みと考えたくないし、これこそ僕がやっていかなくちゃいけない仕事なんだと思います」
現役時代の盟友・三浦監督「だからこそ何とかしたい」
石井コーチとしても明確な目標がある。それは指導者としては未踏の日本一になることだ。ゆえに骨をうずめるつもりで横浜に帰ってきた。選手たちの個性も理解したなか「貪欲に戦える集団になりましたか?」と問うと、石井コーチは「もちろん」といった風情で頷いた。