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[傷だらけの告白]川端慎吾「日本一の決勝打、涙の真相」
posted2022/03/18 07:03
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph by
SANKEI SHIMBUN
20年ぶりの頂点をつかんだ千金打の陰には、“代打の神様”の知られざるドラマがあった。直前に負った大怪我を隠しながら立った打席。不屈の男が今明かす、苦悩と覚悟の33日間とは。
史上稀に見る大接戦の連続となった2021年の日本シリーズは、ヤクルトが3勝2敗で王手をかけて第6戦へと突入した。
この試合もまた、1対1の同点のまま試合は延長戦に突入。引き分けが目前に迫った12回表のヤクルトの攻撃も2死となっていた。
マウンドは、オリックス・中嶋聡監督がリリーフ陣のキーマンとして起用してきた吉田凌。その2球目を塩見泰隆が左前へ弾き返して、試合は動き出した。
ヤクルトの高津臣吾監督が動く。代打の切り札・川端慎吾内野手の投入である。
「ポイントを近づけて、逆方向への意識を強く持って打席に向かいました」
この打席を川端は振り返る。
「吉田くんの球筋については、青木(宣親)さんとか、それまでに対戦していた人から聞いていました。スライダーがちょっと特殊な感じのピッチャーという認識だった」
5球目がワンバウンドの捕逸となり、塩見が二塁へと進んだ。続くフルカウントからのインコースへのスライダーを、今度は川端がカット気味にファウルして逃げる。
そして7球目。再び来たインハイの130kmのスライダーに、川端はバットを出した。左翼前にフラフラッとフライが上がる。差し込まれ、完全に打ち取られた打球。それでも最後に川端は左手でボールをしっかりと押し込んだ。その押し込んだ分、計ったようにショートの紅林弘太郎と左翼の吉田正尚との間にポトリと落ちた。塩見が頭からホームに滑り込み、土壇場でスコアボードに1点が刻み込まれた。