23年守ったシードを喪失…52歳・藤田寛之が目指すものは？ ガンを宣告されてもツアー出場を続けた“マムシ”の残像

　頭上を分厚い雲が覆う。時折、強く降りしきる雨。背を丸め、傘で視界を遮って進んでいると、ふとした瞬間に自分の足取りの重さに気づく。

　時間が経てばいつか、お日様が顔を出すと知っていても、心持ちが軽くなるわけではない。

「晴れの日にゴルフをするとテンションが高くなるでしょう。若者はそういう気持ちでプレーしていて。でも、年を取って、40代、50代となると……曇ってきて、小雨がぱらついて、雨がだんだん強くなっていくようで。“どんより”とゴルフをしていると、集中力やゴルフを純粋に楽しむ気持ちが薄れていく感じはありますよね」

　ゴルフは「ただの仕事である」と言うつもりはない。むしろ、人生そのものだと認めたっていい。それでもだ。放つボールに乗るはずの期待感はあの頃よりもずっと少なくなった。

　この冬、藤田寛之はツアープロとして一つの節目を迎えた。

23年間守ってきた賞金シード権を失った

　日本ツアー通算18勝。そのうち実に12勝を40代になってから積み上げた“中年の星”は、1997年に初めて手にした賞金シード権を2021年の終わりに失った。

　賞金ランキングの上位で1年を終え、シード選手としてシーズンを戦う事実はどこの国であってもツアープレーヤーとしての勲章だ。藤田は今年度、ランキングで70位と低迷（65位までがシード獲得圏内）し、1997年から23シーズン持ち続けたこの年間出場権を喪失。尾崎将司（32シーズン連続）、片山晋呉（24シーズン連続※継続中）に次ぐ継続記録にピリオドを打った。　

©︎Yoichi Katsuragawa

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　ゴルファーとしてはれっきとしたシニア世代、52歳である。

「この年になってトレーニングもケアも、賞金王になった時と何ひとつ変わらないことをやっている。それでダメならしょうがない気持ちがある。（若手にすれば）『もうお引き取り下さい』というのもあるでしょう。自分が若い時は（ベテランに）『いつまでいるの』って思っていたもの（笑）」

　それでいて「情けない」と思うのは、藤田が力を尽くしたこの十数年のあいだ、彼を支えた周囲のサポートも変わらなかったからだ。「応援してくれる人の前で結果を残すのもプロ」とロープの外に目をやった。

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