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星野や落合と何が違う? 周囲が驚いた監督・立浪和義の「経営者のような視点」とは…茶髪とヒゲNGも「時代が違うのはわかっている」
text by
鈴木忠平Tadahira Suzuki
photograph byYoshiyuki Hata
posted2022/03/25 06:02
「強竜復活」を託され12年ぶりに中日ドラゴンズのユニフォームに袖を通した立浪和義監督(52歳)
――背番号が73番と発表されました。星野監督の77番をつけてもらいたいという期待もあったようですが。
「そういう期待があったのは知っていました。でも、自分がつけたら期待されすぎるかなと……。だから落合コーチに、英二につけてもらった。77番はベンチに1人いればいいのかなと思っています」
――コーチングスタッフを選ぶうえで考えたことは何ですか。
「人間性と教える力、両方がないといけないと考えていました。結果として素晴らしいスタッフが集まってくれた。今いるすべてのスタッフがふたつ返事でやらせてもらいますと言ってくれた。特に落合英二なんて、様々なオファーがあったみたいですけど、セ・リーグでユニホームを着るのは自分がドラゴンズの監督をするとき、ということでずっと待っていてくれました」
――2年前に退団していた森野将彦コーチも呼びました。彼とは現役時代、ポジションを争ったこともありました。
「左バッターでも期待される選手はたくさんいますし、すごくこのキャンプでも張り切ってやってくれている。彼は根気よく教えることができるコーチなので、そういう意味でも期待しています。当然、組織なので仲が良い悪い、気が合う合わないはあると思うんですけど、そこは仕事なんで。あいつとは合わないからしゃべらないではいけない。そこだけは割り切ってやってくれと、コーチ陣には言いました」
ベテランのスタッフが感じた立浪の変化
落合の他にも「いざ鎌倉」という意気込みで馳せ参じたスタッフはいる。立浪には人を引き寄せる何かがある。一方で、トップに立つ者として、意識的に周囲と距離を置いている気配もうかがえた。20年近くもチームを舞台裏から支えてきたスタッフは、監督となった立浪の変化についてこう言った。
「現役のころと変わりましたよね。なんというか……人の使い方にしても経営者のような視点を感じます。片岡さんとの距離感なんて、まさに象徴的です」
立浪と片岡篤史は自他ともに認める盟友である。PL学園時代、脱走しようとした片岡を立浪が引き留めたのは有名な逸話だ。2人の間に入れる者はいないだろう。ただ立浪はその片岡に二軍監督を任せた。それぞれ異なる戦場に立つことを選んだ。その距離感に、絆や仁義という言葉だけでは語れない合理性が漂っている。生え抜きのスターでありながら、長らく在野の人だった時間がそうさせたのか……。