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ワインとシエスタとフットボールとBACK NUMBER
「私を求めるクラブはないのか」80歳のオシムが意気軒昂に語る指導者への情熱「監督が走る必要はない」
text by
田村修一Shuichi Tamura
photograph byAFLO
posted2022/03/04 11:01
2019年にシュトゥルム・グラーツの110周年記念行事に参加したオシム。この時78歳。老いてなお眼光鋭い
「それならいい。戦争をはじめ世界には多くの問題が生じている。コロナとの戦いも終わりを迎えてはいない。さまざまな制約がこの世界にはあり、多くの人々が援助を求めている。彼らは破壊に対して無力だ。
実際、今はコロナで自由に外出して食事もできないし、行きたいところにも行けない。日常生活が損なわれている事態を、どのように改善していけばいいのか。人々は規律に溢れているわけではない。コロナ禍が始まってすでに2年がたつが、対処の仕方もまだよくわかっていない。多くの命が失われ、病気とわかったときにはすでに手遅れだ。
日本もやがて通常の生活を取り戻せることを願おう。それが可能だと確信しているし、サッカーがコロナに打ち勝つと私は思っている。医学が進歩して、スタジアムを埋め尽くす観客を、感染から守れる日が来ることを。集中的な資本の投下と研究により、薬が開発されるのもそう遠い先ではないだろう」
――そうかも知れません。
人類が進むべきポジティブな戦争
「それが今、最も重要なことだ。戦争を起こすならば、それはコロナに対する戦争であるべきだ。破壊をもたらす戦争ではなく、ポジティブなものを求めての戦争。われわれはその方向に進むことができる。
それで日本代表はどうなっているのか?」
――今はサウジアラビアに次ぎグループ2位で、オーストラリア戦に勝てば突破はほぼ間違いないです。
「次の相手はオーストラリアなのか?」
――3月末に2試合あって、最初がアウェーのオーストラリア戦、次がホームでのベトナム戦です。日本とオーストラリアの勝ち点差は3です。
「日本はどうかわからないが、ヨーロッパではまるで流行のように監督交代が頻繁に起こっている。優れた監督が同じように優れた監督にとって代わられる。マンチェスター・ユナイテッドがそうだ(昨年11月に起こった、オーレ・グンナー・スールシャールからマイケル・キャリックを経てラルフ・ラングニックへと至った監督交代)。どこでも同様で、何かをもたらしてくれる選手を常に求めている。そうであるからチームがなかなか安定せず、優秀な監督といえどもいっときも気が休まらない。
それで君はどうなんだ?」