――しかしウクライナの状況は、そういうことすらいえないほどに切羽詰まっています。

「サッカーが通常通りにおこなわれれば戦争も回避できる。逆説的なようだがそれもまた真実だ。とはいえ今日はコロナが蔓延しているうえに戦争まで起こった。ちょっとひど過ぎる。

　それで日本はどうなんだ。Jリーグはどうなっているのか。前評判はどこが高いのか？」

――フロンターレとマリノスです。レッズも評価は高く、この3つが優勝候補です。

「川崎の監督は誰か。まだ同じ日本人がやっているのか」

――ええ、鬼木がやっています。この5年間で4度優勝した優れた監督です。

穏やかな日々が続くことを願っている

「それは素晴らしい。サッカーが日本社会にしっかりと根づくことを私は願っている。日本社会のなかで必要不可欠なものとなることを。

　サッカーを実践する若者たちに注意を払うべきだ。彼らの教育環境などについて。最優先課題はすべての若者が学校に通うことだ。日本では当たり前でも、そうでない地域は世界にたくさんある。他にも考えるべきは……、サッカーは人々から支持されているがあまり遠くまで行き過ぎないことだ。というのも価値が上がり過ぎれば人々はサッカーへの反発を覚える。誰もが十分な収入を得ているわけではない。サッカーばかりが突出すると周囲はそこに違和感を覚える。そうした反発の気持ちは、少しずつ着実に人々の心に浸透していく。

　だがいい。あなた方の物語はすでに完結している。サッカーにどれほどの金銭的な価値があるかを日本人はよく理解し、素晴らしいリーグで素晴らしいプレーを実現している。ヨーロッパでも多くの日本人がプレーするのを私は目にしている。その数は年々増え続けて若年化も進んでいる。このまま進化を続ければJリーグはさらに素晴らしくなるしサッカーの質も上がっていくだろう。そうなることを私は願っている。すべてのスタジアムが観客で溢れることを。君のように食事が済んだら家族や友人とサッカーを見に行く。そうした穏やかな日々が、これからも続いていくことを」

＜後編に続く＞

#2に続く

「私を求めるクラブはないのか」80歳のオシムが意気軒昂に語る指導者への情熱「監督が走る必要はない」

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