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「唯一残念なのはオカザキをセリエAで…」 ザックが“メッシのアルゼンチンを撃破した岡崎慎司のゴール”を絶賛したワケ
text by
豊福晋Shin Toyofuku
photograph byNaoya Sanuki
posted2022/03/29 06:02
アルゼンチン戦で決勝ゴールを決めた岡崎慎司。ザックに重宝されたプレーヤーの代表格だ
準備の時間がない中、メッシらを迎え撃った
メッシをはじめ、アルゼンチン代表にはテベス、ディエゴ・ミリート、マスチェラーノ、カンビアッソら当時のビッグクラブの主力が揃っており、イグアインやディマリアですら途中出場だった。
「私には準備の時間はほとんどなかった。だから基本的にはこれまでのベースとなっていた選手を起用した。相手はアルゼンチン、難しい試合になると思っていた。だからこそ、前半早い段階に決まった、私にとって記念すべき日本代表での1点目、岡崎のあのゴールは感慨深かった」
改めて映像を見返してみる。こぼれ球を長谷部誠がミドルシュート。アウトにかかり右に流れていくボールをGKがこぼす。そこに、髪の長い岡崎が獲物に飛びつく豹の勢いで飛び込んでくる。ボールはネットを揺らし、岡崎は倒れこむ。頷くザッケローニが画面に大きく映し出される。
岡崎にはじまり岡崎で終わったゴール
「素晴らしいゴールだった。岡崎にはじまり岡崎で終わったゴール。本来、彼はセンターフォワードだが私は右サイドに置いた。サイドでも中央でもできる幅の広さがあると一目見てわかったからね。あのゴールは右サイドの岡崎が縦へ進み、クロスをあげたところから始まる。その時は右サイドにいたがすぐに中へ絞り、長谷部がシュートするタイミングではすでに詰めようと走り出していた。あのゴールへの嗅覚は代表の中でも並外れていた。岡崎の一発は日本全体に希望をもたらしてくれたんだ。ここから素晴らしい時代が始まる。試合後は日本サッカー全体がそんな雰囲気に包まれていた。チームには自信も生まれ、それがその後のアジアカップ優勝にもつながった」
岡崎はその後も右サイドに君臨し続けた。ブラジルW杯までの4年間で47試合に出場し、代表最多の22得点を決めている。