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ロマチェンコやウシクまで銃を手に…“極限の選択”を迫られたボクシング大国・ウクライナの選手たち「歩いてでも家族の待つ国に帰る」 

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渋谷淳

渋谷淳Jun Shibuya

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posted2022/03/02 11:03

ロマチェンコやウシクまで銃を手に…“極限の選択”を迫られたボクシング大国・ウクライナの選手たち「歩いてでも家族の待つ国に帰る」<Number Web> photograph by Getty Images

2012年ロンドン五輪で2大会連続の金メダルを獲得し、プロ転向後も世界最速で3階級制覇を成し遂げたワシル・ロマチェンコ。ロシアの侵攻を受けて、母国ウクライナの領土防衛隊に入隊したことが報じられた

 00年シドニー五輪銀メダルのアンドレアス・コテルニクはプロでWBAスーパーライト級王者に、銅メダルのウラジミール・シドレンコは同じくWBAバンタム級王者に輝いた。メダリスト以外にもセルゲイ・ジンジラク(WBOスーパーウェルター級)、ビチェスラフ・センチェンコ(WBAウェルター級)、ユーリ・ヌズネンコ(WBAウェルター級)らが世界チャンピオンになっている。WBAフライ級王座を5度防衛しているアルテム・ダラキアンは現役の世界王者だ。

彼らの戦う場所はリングであり、戦場であってはならない

 2008年9月、ウクライナ西部のリビウでコテルニクの世界タイトルマッチが開催された。挑戦者が日本国内無敵を誇っていた木村登勇だったので、ウイーン経由でウクライナまで取材に出かけた。ウクライナで出会った人は「すれていない」というのが印象的だった。木村は負けてしまったけれど、初めて訪れたウクライナにはいい思い出しか残っていない。そのリビウには今、10万人にも上る国内避難民が詰めかけているという。

 プロボクシングを統括するメジャー4団体(WBA、WBC、IBF、WBO)は2月26日、ロシアで行われるいかなるタイトルマッチも承認しないという共同声明を発表。ロシアのウクライナ侵攻に足並みをそろえて抗議した。状況は刻一刻と動き、戦争がいつ終わるのか、見通しは立っていない。

 ロマチェンコが、ウシクが一日も早くリングに戻れるよう、ポストルが母国で家族と安心して暮らせるよう、心から願う。彼らの戦う場所はリングであり、戦場であってはならない。同時にこうも願う。母国の蛮行で白眼視されるロシアの選手たちにも、活躍の場が早く戻ってくることを。

記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。

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