禁止薬物の陽性反応でライセンス停止から4年…IBF世界王座を獲った尾川堅一が明かす“地獄の日々”「自分のためならとっくにやめている」

「4年前のファーマーとの試合で……子供たちにベルトを……すみません」

　取り戻した赤いベルトを掛けた肩が、小刻みに震えていた。ニューヨークのマンハッタンにある“スポーツとエンターテイメントの殿堂”マジソン・スクエア・ガーデンのザ・シアター（現在はHuluシアター）、そのリング上でインタビューに応じる尾川堅一は言葉を詰まらせた。

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　2021年11月27日、IBF世界スーパーフェザー級王者決定戦。同級3位尾川は同級2位・アジンガ・フジレ（南アフリカ）から計3度のダウンを奪い、3－0判定で戴冠に成功した。スピードで上回り、武器の右ストレート“クラッシュライト”をヒットさせた。

IBF王座を手にしながらも禁止薬物の陽性反応が出た

　地獄からはい上がってきた。

　ラスベガスでテビン・ファーマーに勝ってIBF王座を手にしながらも禁止薬物の陽性反応が出たためにノーコンテストとなってから約4年。アメリカ・ネバダ州コミッションから試合日から6カ月の出場停止と罰金の処分、日本ボクシングコミッション（JBC）からは1年間のボクサーライセンス停止処分を受けた。本人からすれば身に覚えがなく、筋肉増強作用成分を意図的に摂取していないことは認められた。

　ボクシングへの情熱を失い、引退しようともした。だが妻と3人の息子たちの支えを受けて、再び世界挑戦のチャンスをつかんだ。

　長男8歳の豹くん、次男6歳の亜陸（あり）くん、三男5歳の皇くん。

　リング上で最後、笑みを浮かべたパパの顔で息子たちの名前を口にして、ベルト奪取を伝えた。やろうと考えていたことだった。

　“幻の世界チャンピオン”のままで終わらせなかった反骨のストーリー。祝福するように赤いベルトは輝きを放っていた。

　年明けに実施したインタビュー。4年前のことは今もなお深い傷跡として本人の心に残っている。ベルトを手にしてもなお――。

　それは2018年1月のことだった。

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