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水島新司先生って実は“将棋マンガ”も描いていた? 草野球で対戦、『あぶさん』にも登場した棋士が知るマル秘エピソード

posted2022/03/03 11:00

 
水島新司先生って実は“将棋マンガ”も描いていた? 草野球で対戦、『あぶさん』にも登場した棋士が知るマル秘エピソード<Number Web> photograph by Sports Graphic Number

Number45号に登場した水島新司先生と、611号のイラスト表紙。実は将棋も好きだった?

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田丸昇

田丸昇Noboru Tamaru

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『野球狂の詩』『ドカベン』『あぶさん』などの作品で知られた漫画家の水島新司さんが、1月10日に82歳で亡くなった。個性的なキャラクターの野球選手たちのプレーやエピソードは、多くの漫画ファンや野球ファンを魅了してきた。水島さんも野球チームを率いて、選手として真剣にプレーしていた。筆者である田丸九段も棋士チームのメンバーで、水島さんと対戦したという秘話をご紹介する。

 水島新司さんは1939(昭和14)年に新潟県で生まれた。中学卒業後、水産問屋で働きながら漫画家を目指し、睡眠時間を削って漫画を描き続けていた。1958年にある漫画新人コンクールで入賞。18歳で漫画家デビューした。

 当初はサスペンス・コメディー調の作品を執筆したが、やがて野球漫画に取り組むようになった。

 1970年に連載を始めた『男どアホウ甲子園』がヒットした。その後、『野球狂の詩』『ドカベン』『あぶさん』などの作品で人気を博し、野球漫画の地平を拓いた。

 リアルな設定や緻密な描写は臨場感にあふれ、水島さんの作品を読んでプロ野球選手を目指した人は多いという。

『ドカベン』の生みの親は、実は相当な愛棋家だった

 水島さんは自身の作品で、セ・リーグに比べて、人気が低くて観客が少なかった頃のパ・リーグに光を当てた。修業時代に大阪に住んだことから、中でも南海ホークスを熱烈に応援していた。

 その南海に売却の話が持ち上がったとき、自分がオーナーになって南海のチーム名を残したいと本気で思ったという。ただ買収資金は自前で調達できたが、運転資金の当てがなくて断念したようだ。

 一般的な野球漫画は、主人公がエースで4番打者という設定が多い。

 水島さんの作品は、突出した天才が大活躍するのではなく、個性的なキャラクターの選手たちが登場し、それぞれの役割を果たしている。まさに全員野球だ。作中の主な選手たちを紹介する。

 長打と打率を兼ね備えた強肩捕手「山田太郎」、ど真ん中は打てない悪球打ち「岩鬼正美」、飲んべいの代打屋「景浦安武」、好守と秘打が特徴「殿馬一人」、美しい下手投げの投手「里中智」、魔球・ドリームボールが武器の女性投手「水原勇気」、160キロ超の豪速球投手「中西球道」、50歳を超えたよれよれ投手「岩田鉄五郎」、忍者の子孫「真田一球」など。

 筆者は、通天閣打法という高い内野フライを打つ「坂田三吉」に興味がある。その名前と大阪のシンボルタワーからは、大阪生まれの伝説の棋士・阪田三吉を思わせる。村田英雄の大ヒット曲『王将』には、阪田三吉が通天閣を見て闘志を燃やす歌詞がある。

 実は、水島さんは将棋が好きだった。阪田三吉がモデルで、名優の阪東妻三郎や辰巳柳太郎が主演した映画『王将』や『王将一代』を、筋書きをすべて言えるほど何回も見たという。

【次ページ】 水島さんと棋士たちは草野球で定期的に対戦

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