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[涙と笑顔の快挙]カーリング女子「苦しい舞台で楽しむ覚悟」
posted2022/02/27 07:00
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by
Naoya Sanuki/JMPA
「ナイス~」「やってみるか~」「いいと思う!」日本史上初の銀メダルを掴み取った道産子軍団は、なぜ、ピンチでも明るい声を出し、笑顔でいられたのか。前向きな言葉と笑顔で乗り越えた2度目の五輪を振り返る。
銀色のメダルを手にすると、涙と笑みが溢れた。カーリング女子日本代表の「ロコ・ソラーレ」は、日本初となる銀メダルを獲得し、11日間の激闘を終えた。前人未踏の決勝の舞台に立つまでには、屈指の強豪との2連戦での変貌があった。
2月17日のカーリング女子予選リーグ最終戦。準決勝に進める上位4カ国のうち、スイスとスウェーデンがすでに進出を決め、日本はこの時点で5勝3敗の3位。最終戦に勝てば決勝トーナメント進出、負ければ日本、イギリス、カナダ、韓国に進出する可能性がある状況だった。最終戦の対戦相手は世界ランク1位のスイス。予選リーグも1位、直接対決の戦績は2勝10敗という難敵だった。
「あたって、砕けろ、いや、砕けたくはないですけど」
サード吉田知那美が試合前日に発したこの言葉は、笑いを含ませながら実力差を感じる相手であることを示していた。
試合は立ち上がりから、観る者に緊迫感を与える拮抗した展開が続く。
後攻が得点をとりつつ迎えた第4エンド、ブランクエンド(両チーム無得点のこと)を狙ったスキップ藤澤五月のラストショットはストーンに当たることなくスルー。スイスに1点スチールを許す。続く第5エンドでも藤澤のショットにミスがあり、スイスが2点のスチール。その後追いつけず4-8で痛い負けを喫する。