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[残酷な4位を超えて]高梨沙羅「もう一度、鳥のように」
posted2022/02/27 07:01
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by
Naoya Sanuki/JMPA
失意の個人戦4位、そして想定外だった団体戦での「失格」。25歳のジャンパーはこの五輪で望まぬかたちで注目を浴びた。だが耳目を集めた涙の裏にある、彼女の本質を忘れてはいけない。
あれからしばらく時が経ち、心中を去来する思いは何だろうか。
高梨沙羅は今、欧州にいる。個人ノーマルヒル、混合団体の2つの試合を終えて間もなく、北京からそのまま渡った。
北京五輪は3度目のオリンピックだった。いまだ手にしていない「世界一」を志して臨んだ大会は、しかし、涙に包まれた残像として残っている。
最初に迎えた種目は2月5日の個人ノーマルヒル。今シーズン、ワールドカップ開幕から表彰台に上がれなかったが年明け早々の大会で優勝。上向きの調子のまま北京入りし、公式練習でも大ジャンプを繰り返すなど自信も得て迎えた試合だった。
1本目は98.5m。5位という順位で迎えた2本目は100m、2本目では最長タイの距離を飛んだことで1本目より順位は上がった。でも1つだけだった。
4位に終わったあと、高梨は涙を浮かべた。その言葉は痛切だった。
「毎試合というか、オリンピックの試合の中で、強い選手の方々が出てきていて。実際ここに今日立つことができなかった選手もいます。こうやって試合に出させてもらえたことがすごくうれしいことでもあるんですけど、結果を受け入れているので、もう私の出る幕ではないのかもしれないなという気持ちもあります」
己のジャンパーとしての可能性への疑念を投げかける言葉は、自らに刃を向けるかのようだった。