Sports Graphic Number SpecialBACK NUMBER

[東京五輪を糧に]平野歩夢「超大技で越えた境界線」

posted2022/02/24 07:00

 
[東京五輪を糧に]平野歩夢「超大技で越えた境界線」<Number Web> photograph by Kaoru Watanabe/JMPA

text by

矢内由美子

矢内由美子Yumiko Yanai

PROFILE

photograph by

Kaoru Watanabe/JMPA

誰にもできないことに挑み続ける。自分の限界をプッシュし続けてきた男が、3回目の挑戦でついに五輪の頂点に登りつめた。スケートボードで夏季五輪に出場し、さらに誰も成し得なかった最高難度の大技を完成させ、自らの時代の到来を知らしめた。

 沸き上がる怒りを、有無をいわせぬパフォーマンスに換え、すべてをねじ伏せた。

 23歳にして実に3度目の冬季五輪出場。スノーボード男子ハーフパイプの平野歩夢が繰り出した誰ひとり真似のできないルーティンに、熱い視線が注がれた。気温マイナス12度。極寒でありながら、パイプを見上げる者は、誰ひとり寒さを感じていないようだった。

 1本目。予選1位の平野は決勝に進んだ12人の最終演技者として登場した。ドロップインから最初に繰り出した「トリプルコーク1440(軸を傾けた縦3回転を含む4回転)」が成功すると、会場がどよめいた。大会では平野だけが成功させている大技だ。

「ワン、ツー、スリー!」「アン、ドゥ、トロワ!」「トリプルコークだ!」

 スノーボード史に残る大技を目撃した喜びをかみしめるように、回転数を数えるいくつもの言語が会場に飛び交った。途中で転倒したため、得点は33.75点と低かったが、次につながるランとなった。

 2本目。今度は会場に大ブーイングが起きた。平野は「フロントサイド・トリプルコーク1440」から始まり、「キャブ・ダブルコーク1440」につなげ、続く2発はフロントサイドとバックサイドの「ダブルコーク1260」の連続技。最後に「フロントサイド・ダブルコーク1440」で締めくくる史上最高難度のルーティンを滑りきったが、予選2位のスコッティ・ジェームス(オーストラリア)が出した92.50点を下回る91.75点というまさかのスコアが表示されたのだ。

こちらは雑誌『Number』の掲載記事です。
NumberWeb有料会員になると続きをお読みいただけます。

残り: 2592文字

NumberWeb有料会員(月額330円[税込])は、この記事だけでなく
NumberWeb内のすべての有料記事をお読みいただけます。

関連記事

#平野歩夢
#村上大輔
#ショーン・ホワイト
#北京冬季五輪
#オリンピック・パラリンピック
#東京五輪

冬季スポーツの前後の記事

ページトップ