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ロングセラー「プロ野球選手名鑑」の舞台ウラ…昔は住所&タバコ量も記載、“特技・乳しぼり”のドラ1は「子供もいるので勘弁してください」 

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岡野誠

岡野誠Makoto Okano

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posted2022/02/15 11:01

ロングセラー「プロ野球選手名鑑」の舞台ウラ…昔は住所&タバコ量も記載、“特技・乳しぼり”のドラ1は「子供もいるので勘弁してください」<Number Web> photograph by Makoto Okano

野球ファンのバイブル『プロ野球選手名鑑』。なかでも随一の情報量を誇る日刊スポーツ新聞社の3名に、名鑑制作のウラ側を聞いた

「堂々と歩いてましたよ。ドサッと料理が出てくると、僕も冷たい視線を送るわけじゃないですか。『減量入院』をしているわけですから。香川さんも一瞬、躊躇するポーズを取る。でも、スッと手を出してパクパクと口に入れてましたね。深夜2時まで食べまくって病院に帰る。そして翌朝8時、神妙な顔で水中歩行をしている。……なんのためにやってんだろうと思って(笑)」

 ドカベンに食い込んだ寺尾氏は89年1月、遂に決断を下した。

「『120キロと書きますよ』と了承を得に行ったと思います。香川さんは本当に人気者で、一緒に歩いていると『ドカちゃん頑張ってな!』と声を掛けられるし、メディアにとっても絵になるありがたい選手でした」

05年に個人情報保護法が施行、取材のハードルは上がるも…

 記者の地道な積み重ねが『選手名鑑』を濃密にさせていった。だが、91年に『小遣い』『クセ』『酒量』『タバコ』欄が消滅して項目が17から12(いずれも成績欄含む)に大幅に減少。創刊時から掲載されていた住所も前年になくなっている。今回取材した3人に理由を尋ねたが、「わからない」と口を揃えた。他社の名鑑に目を向けると、ベースボール・マガジン社は91年から住所が不掲載になっている。原因は以下のようだ。

〈巨人の発表が「東京都杉並区」など簡略化した住所になったのが90年で、その翌年からは住所はすべて外された〉(『ベースボールマガジン』2006年春季号)

 05年には個人情報保護法が施行され、年々取材のハードルが上がっている。

「昔は選手の自宅から一緒に車に乗って、球場に行く間に話を聞いていました。他社と違う情報が得られるし、そこが勝負でもあった。近年、その取材も基本的にNGです。一昨年からコロナの影響でさらに難しい状況になっていますが、名鑑ではその選手らしいエピソードを伝えていきたい。担当記者によって寸評のテイストもだいぶ違うので、各球団を比較したり、同じ選手の数年分を読んだりするのも面白いと思います」(鳥谷越氏)

 記者の取材成果が詰まった『選手名鑑』を手に、今年もプロ野球を楽しみたい。

記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。

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