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ロングセラー「プロ野球選手名鑑」の舞台ウラ…昔は住所&タバコ量も記載、“特技・乳しぼり”のドラ1は「子供もいるので勘弁してください」
text by
岡野誠Makoto Okano
photograph byMakoto Okano
posted2022/02/15 11:01
野球ファンのバイブル『プロ野球選手名鑑』。なかでも随一の情報量を誇る日刊スポーツ新聞社の3名に、名鑑制作のウラ側を聞いた
「92年に本人から『結婚して子供もいるので、乳しぼりは勘弁してください』と言われまして(笑)。その時、僕は阪神担当に変わっていたので、ダイエー担当に伝えたと思ったのですが、前年のまま記載されてしまった。次の年、『去年言ったと思うんですけど、まだ乳しぼりになってるんですけど……。周りから言われるんで、乳しぼりは変えてもらえますか』とお願いされて、変更になりました」
名鑑取材に積極的な選手もいた。今年からソフトバンクの監督を務める藤本博史は入団3年目から特技欄に『柔道は自称2段』と記載されていた。
「髭を生やした風貌からは想像しづらいですが、よく冗談を言うタイプなんです。『笑わしたろう』という関西人のノリで答えたのだと思います。名鑑の中で目立つことを言いたいという選手も多かったですよ」
ドカベン香川伸行の体重「120キロ」、記載に至る“ドラマ”
南海には、ドカベンの愛称で親しまれた香川伸行という人気者がいた。体重は優に100キロを超えているように見えたが、名鑑には『96キロ』という記載が続いた。だが、89年に『120キロ』と突然24キロもアップしている。その過程には、知られざるドラマがあった。
「デスクにも『ドカベンの96キロってありえないだろ』と突っ込まれていました。でも本人に聞くと、頑なに『3ケタはないよ』と言い張るんですよ。毎年、断言されましたから(笑)。87年のオフ、香川さんが浪速の入野医院に前代未聞の『減量入院』をしたんですよ。早朝からプールの中を歩く姿が大々的に取り上げられ、記者に『今日の朝のメニューなんですか?』と聞かれると、『フルーツとサラダしか食うてないよ』と答えてましたね。各社が“ドカベンついに断食”と報じていたと思います。だけど、夜になると必ず電話があるんですよ。『寺尾、メシ行こう』って(笑)」
香川は寺尾氏を連れ出し、なんばの街に繰り出した。さすがに人目を忍んだのか。