オリンピックPRESSBACK NUMBER

清水の金メダルから24年、新エース・新濱立也が巻き起こすセンセーション…加藤条治「人間はそこまでいけるんだと」 

text by

矢内由美子

矢内由美子Yumiko Yanai

PROFILE

photograph byL)Takuya Sugiyama/JMPA、R)KYODO

posted2022/02/11 11:04

清水の金メダルから24年、新エース・新濱立也が巻き起こすセンセーション…加藤条治「人間はそこまでいけるんだと」<Number Web> photograph by L)Takuya Sugiyama/JMPA、R)KYODO

長野五輪の金メダリスト・清水宏保と、北京五輪に臨む新濱立也(25歳)

 低迷する男子勢の中で平昌五輪の後に急速に台頭したのが新濱だった。2019年2月に初出場した世界スプリント選手権で2位になって表彰台に上がると、同年3月のワールドカップ最終戦(米国ソルトレイクシティー)で加藤の日本記録を破る33秒83をマークした。現在の日本記録保持者である新濱について、加藤はどのような目線を送っているのだろうか。

「次の日本を背負っていく最重要人物。新濱が時代を変えたと思います。日本もそうだし、世界もそうです」

 加藤は新濱を高く評価した。その理由はこうだ。

「アスリートはひとり飛び抜けた選手が出てくることによって、自分の殻が破れるというか、その先があることを知ることができるものです。ひとつの指針になったという意味で、新濱選手の世界への功績は大きいのです」

新濱の“世界記録”が評価される理由

 前述した2019年3月のW杯最終戦で新濱が出した33秒83は、瞬間的に“世界記録”でもあった。同じレースのその後の組で滑ったパベル・クリズニコフ(ロシア)がすぐに33秒61を出して新濱のタイムは塗り替えられてしまった。

 ただし、クリズニコフはかつて禁止薬物のメルドニウムが検出されたためドーピング違反により2年間の出場停止処分を受けたことがあり、平昌五輪も出場できなかった。今も懐疑の目で見ている海外勢は少なくないとも聞く。だからこそ、新濱選手の登場は世界でもセンセーショナルだったという。

「“ナチュラル”な新濱選手が出てきたことで、人間はそこまでいけるんだと気づかせてくれた。スケート界の先頭をきってきた選手だと思います」

 北京五輪は新濱にとって最初の五輪の舞台となる。2月5日に五輪本番会場の「国家スピードスケート場」で行われたタイムトライアルでは全体トップの34秒38をマークし、好調をアピールした。金メダルに最も近い位置にいる選手の一人であるのは間違いない。

日本男子勢、金メダル獲得の“条件”は…

 加藤に、金メダルを獲るための条件は? と聞くと、「獲っていないので分からない」と苦笑いしながらも、このようにアドバイスした。

「最低でも、自分の能力をそこで発揮するのが大切。金メダルを獲れない人は、何かしらのミスが起きたり、マイナス要素が働いている。獲っている人は、ミスを最小限に抑えられたり、自分の力以上を出せたりして、プラス面が出ている。まずは、いかに自分らしく滑れるか。それと、気負いすぎないことが大事。応援されたり注目されたりすると、精神状態が大きく変わるので、周りの声を聞き過ぎないことも大事かなと思います」

 男子500mのレースは2月12日。森重、村上も含めて日本勢のメダル獲得の瞬間を加藤も期待している。
 

#1から読む
天才スケーター・加藤条治が語る“金メダル候補という人生”…五輪で銅獲得も「世界で3番の人だと認識されますから」

記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。

関連記事

BACK 1 2
加藤条治
清水宏保
新濱立也
北京冬季五輪
トリノ五輪
オリンピック・パラリンピック

冬季スポーツの前後の記事

ページトップ