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オリンピックPRESSBACK NUMBER
清水の金メダルから24年、新エース・新濱立也が巻き起こすセンセーション…加藤条治「人間はそこまでいけるんだと」
posted2022/02/11 11:04
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph by
L)Takuya Sugiyama/JMPA、R)KYODO
「天才」の名をほしいままにしてきたスケーターに、男子500mの新旧日本記録ホルダーへの思いや期待を尋ねた。(全2回の後編/前編へ)
加藤が「僕が知っているスケート選手の中ではもっとも偉大な人の一人」と断言するのが清水だ。
清水は加藤の11歳上。1994年リレハンメル五輪で五輪初出場を果たすと、1998年長野五輪の男子500mで金メダル、同1000mで銅メダルを獲得した。2002年ソルトレイクシティー五輪では500m銀メダルを手にしている。加藤は高校3年生で初めてW杯代表に選ばれた2002年から2006年トリノ五輪シーズン前まで清水を“追いかける”立場にいた。
「清水さんは上の存在。そこは変わらない」
2005年11月の世界記録樹立は、清水の記録を破って打ち立てたものだった。しかし、加藤が考える「記録」とは、時代の移り変わりにすぎないという。
「世代が代わって、清水さんのタイムを僕が更新していますが、それはただ時代がそうなったから。清水さんって本当にすごい選手だなと思うんです。清水さんは自分より上の存在。タイムを抜いたからってそこは変わらない」
そんな思いを常々抱いていた加藤は、昨年12月に長野エムウェーブで行なわれた北京五輪代表選考会に、あるテーマを自身の胸に秘めて挑んだ。
「僕の北京五輪へのテーマの一つだったのが『今の世代VS昔の世代』というものでした。今の世代(北京五輪代表の新濱立也、森重航、村上右磨)がなぜ速いかというと、選手の能力が高いのはもちろんですが、道具が昔よりも進化しているという側面があると思っています」
昔のスーツでは「まったく滑れるものじゃない」
スケート靴、ブレード、そしてレーシングスーツ。
「もしも今、昔のレーシングスーツを着用すると、まったく滑れるものじゃないくらい」と加藤は言う。
「僕の中では、今の選手が抜群のタイムを出すと昔の選手が甘く見られるんじゃないか、という危惧がありました。それならば、ひと昔前の僕が今の道具で今の時代の人間と戦うとどうなるか。僕が頂点に立てたら、清水さんの強さも証明できる。そんな思いでした」
とはいえ北京五輪代表の3選手に対しては「今の時代で勝っている選手がいちばんすごいし、強い。尊敬できる部分はもちろんあります」とリスペクトを込めて言う。
エース新濱立也は「時代を変えた」
平昌五輪のスピードスケートで日本勢は女子が空前の大活躍を見せた。金3つ、銀2つ。これらはすべて女子だ。
一方、男子はバンクーバー五輪男子500mの加藤、長島圭一郎(銀)を最後に、ここ2大会はメダルがない。