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祖母は今も北京在住、“思い出の動物園”も会場の近くに…ネイサン・チェンがSP圧巻の世界新で高く拳を突き上げたワケ
text by
田村明子Akiko Tamura
photograph byAFLO
posted2022/02/09 17:04
2月8日の男子シングルSPにて、世界新を記録し首位に立ったネイサン・チェン
「思い出の北京動物園」
この北京の街は、チェンにとって特別な場所でもある。
5人きょうだいの末っ子のチェンは、両親とも中国本土からアメリカに移住してきた。特に医療関係の通訳をしている母親は、北京で生まれ育ったのだという。チェンも10歳くらいの時に、北京を訪れて動物園に行った思い出がある。
フィギュアの会場になっている首都体育館は、この北京動物園からほど近い。だがもちろん、パンデミックのために厳しいバブル方式で開催されているため、会場と宿泊施設間の決まったルート内の移動以外は許されていない。たとえ競技が終了しても、チェンが子供の頃の思い出の動物園を再訪することは、難しそうだ。
チェンの母方の祖母はまだ北京に住んでいるという。だが1月の全米選手権の際に、家族や親戚は観戦に来るのかと聞かれて、チェンはこう答えた。
「祖母の年齢を考えても彼女が会場に来るのは難しく、それに一般の市民がチケットを手に入れることは不可能に近いようなんです」
その後もちろん、オミクロン株の影響で無観客での開催が決まった。チェンの祖母は、おそらくテレビで孫が世界最高スコアを出したところを見たのに違いない。
いよいよ決戦の時。両親の母国で、チェンは五輪の王座をつかむのだろうか。