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祖母は今も北京在住、“思い出の動物園”も会場の近くに…ネイサン・チェンがSP圧巻の世界新で高く拳を突き上げたワケ

posted2022/02/09 17:04

 
祖母は今も北京在住、“思い出の動物園”も会場の近くに…ネイサン・チェンがSP圧巻の世界新で高く拳を突き上げたワケ<Number Web> photograph by AFLO

2月8日の男子シングルSPにて、世界新を記録し首位に立ったネイサン・チェン

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田村明子

田村明子Akiko Tamura

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 これほど興奮しているチェンを見たのは、いつぶりだっただろう。完璧なSPを滑り終えたネイサン・チェンは、拳で天を突くように腕を振り上げて見せた。

「何が自分にとりついたのかわかりません。普段はあんなこと、まずしないんですけど」

 そうコメントしたチェンは、実際大げさに感情表現をすることは、これまでほとんどなかった。後半に4ルッツ+3トウループのコンビネーションを入れるという、史上最高難易度のSPは、113.97を得て歴代ベストスコアの更新となった。

「自分のできるベストにかなり近い演技だったと思います。もちろん何かもっとさらにできることというのは常にあると思うけど、全体としては満足しています」

 そう語ったチェンは、どれほど胸を撫でおろしたのだろう。

明かしていた「オリンピックのプレッシャー」

 4年前の平昌オリンピックの前、アメリカではネイサン・チェンの広告写真はいたるところで目に付いた。コカ・コーラ、ナイキ、ユナイテッド航空といった大手企業がスポンサーにつき、18歳だったチェンを五輪金メダリスト候補として盛り立てた。

「プレッシャーはないです。期待されるのは光栄なこと」

 そう言い続けていたチェンだったが、平昌オリンピックの団体戦、個人戦ともにSPでジャンプミスを連発して、個人戦SP17位という考えられないスタートをきった。

 あれから4年。22歳になったチェンは3度のGPファイナル金メダル、世界選手権タイトルを手にし、出場した大会全てで勝ち続けてきていた。

【次ページ】 演技直前、チェンの胸は緊張で大きく上下していた

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