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「もうダメかも」阪神・糸井嘉男がオフに抱いた不安とは? 今年で41歳になる“超人”が開幕スタメンにこだわる理由
text by
田中大貴Daiki Tanaka
photograph bySankei Shimbun
posted2022/02/10 11:01
今年で41歳になる糸井嘉男。キャンプでは初日から好調ぶりをアピールしている
福留孝介、能見篤史ら年上のベテラン勢は移籍した。中田賢一、岩田稔ら1つ、2つ下の後輩たちは現役引退。チームにいわば“同世代”の選手たちが次々と球団を去った。野手では10歳以上も離れる選手ばかり。立場を共有できる選手がいない環境で、糸井は闘っている。
「同じ能力なら、未来ある若手を起用しますよね。それがプロの世界。若い頃なら冗談を言って笑いをとっていた自分もいた。今はもう立場が違いますからね。ここぞの場面で頼られなければいけない。大事なところで“糸井嘉男が必要だ”と思ってもらえる選手じゃないと」
これまでは姿で、パフォーマンスで、自らの結果でチームを牽引してきた。不惑の時を迎え、縦じま軍団の最年長プレーヤーとして現役続行の機会をもらえた今、何をチームに還元できるかも考えている。
「シーズンの重要なところで若い選手を集めて伝えなければいけないことが出てくるかもしれない。プレー以外では後輩たちからイジられる存在でいたいと思っていた。でも大事な時には集まってもらって話さないといけない場面もあると思う」
でも、野球は嫌いになれなかった
矢野燿大監督は新シーズン早々に、今季限りでの退任を明言した。昨季、優勝を逃した選手たちには、忸怩たる想いがあるだろう。その想いが最も強いのは41歳を迎える大ベテラン・糸井かもしれない。
「結果が出ない、試合に出られない時、逃げ出したくなる衝動にかられることもありました。でも野球は嫌いになれなかった。気が付いたらバットを持って練習してました。情熱を持って人生の半分をプロ野球に注いできましたから。1シーズンは長いですし、いろんな苦しいこともある。でも今年は最後に笑っていたいなと思うんです」
佐藤輝明ら、虎の若手有望株とのサバイバルレースが待っている。とにかくアピールを続け、レギュラーを獲りに行くと語気を強めた。
2005年以来、16年もの間、リーグ優勝から遠ざかる阪神タイガース。矢野監督が宙を舞う時、その歓喜の中心にはチームを牽引した新たな糸井嘉男がいるはずだ。