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「ダルビッシュさんは命の恩人です」“無名右腕ドジャース契約”のウラに異色の29歳コーチの存在《BCリーグ最下位球団からNPB入り続出の理由》
posted2022/02/04 11:01
text by
菊地高弘Takahiro Kikuchi
photograph by
Ibaraki Astro Planets
年が明けて間もなく、日本の独立リーグに所属する無名の右腕が、MLBのロサンゼルス・ドジャースとマイナー契約したニュースが伝えられた。
右腕の名前は松田康甫。BCリーグ・茨城アストロプラネッツに所属する23歳である。その特殊な経歴も話題になった。
拓殖大では公式戦での登板が大学4年秋のわずか1試合のみ。それも打者3人に3四球という惨憺たるものだった。大学卒業後の2021年に茨城に入団したが、BCリーグ公式戦での成績は2試合に登板しただけ。同年7月にはトミー・ジョン手術を受け、シーズンを終えている。
無名右腕が見せた衝撃の“三者連続三振”
実績らしい実績がなく、しかもリハビリ中の選手がなぜMLB球団と契約できたのか。それは故障する直前の巨人三軍との試合で見せた、衝撃的なパフォーマンスにあった。
先発で登板した松田は、三軍とはいえNPBの打者を相手に三者連続三振を奪った。身長193センチ、体重93キロの巨体を生かし、右腕を真上から叩き下ろす剛速球は最速155キロに達する。巨人戦の映像が決め手となり、松田はドジャースとの契約を勝ち取ったのだ。
松田が急成長した背景には、一つ気になる要因があった。2021年から茨城アストロプラネッツの投手コーチ兼ストレングス&コンディショニングコーチに就任した、小山田拓夢の存在である。
第一印象「ウサイン・ボルトみたい」
小山田は知る人ぞ知る、注目の指導者だ。プロ野球選手やドラフト候補も多数入会する野球オンラインサロン「NEOREBASE(ネオリベース)」の指導者メンバーに名を連ねている。NPB球団に在籍した経験はないものの、その野球人生は有名メジャーリーガーから知己を得るなどドラマ性に富んでいる。
「松田のパワーはNPBを含めて日本人トップレベルにあるので、97~98マイル(156~158キロ)をコンスタントに投げられる体を作れるかがカギになると思います。23歳でも伸びしろは残っているので、楽しみです」
その穏やかな語り口には、自身の手柄を誇るような功名心は感じられない。小山田は「松田にはもともと素晴らしいポテンシャルと技術が備わっていた」と語る。