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36歳ナダルは史上最多21勝「隣で毎日助けてくれる人たちのおかげ」…では、メドベージェフはなぜ観客を敵に回すのか?
text by
秋山英宏Hidehiro Akiyama
photograph byHiromasa Mano
posted2022/01/31 17:30
前人未到の偉業に挑んだナダルとメドベージェフ。勝ったのは、36歳の王者ナダルだった
ナダルは慢性的な故障となっていた左足の治療のため、昨年は8月で早々にシーズンを切り上げた。12月には新型コロナに感染、発熱など重い症状もあったという。それでもツアーに戻りたい一心で調整し、この大会に臨んでいた。試合後、ナダルは「身体的にはぼろぼろだ」と打ち明けた。
「正直なところ、こういうバトルをこなすだけのフィジカルの準備が整っていなかった。でも、自分の中にあるものをすべて出し切った。超疲れている。優勝のお祝いもできないくらいだ。でも、今日はすべてを出し切る日だった。僕は戦いを楽しんだ。感動を味わった。最後にこのトロフィーを手にした。これ以上の幸せはないよ」
優勝の最大の要因を聞かれて…
総獲得ポイントはナダルが182、メドベージェフが189だった。長い試合、そして複雑な要素が絡み合う試合で、勝敗を左右する要素をひとつひとつ挙げればキリがない。だが、極言すれば、7ポイント少なかったナダルの勝利は、その頑張りがもたらしたと言える。ナダル自身、優勝の最大の要因を、こんな抽象的な言葉で言い表している。
「競技への愛、情熱、前向きな姿勢、また、努力を惜しまない精神だ。そして、隣で毎日助けてくれる人たち。それがすべてだよ」
多くの後進プレーヤーがこの言葉を胸に刻み、この後の競技に取り組むことだろう。
ナダルの美しい言葉で稿を締めくくる手もあるが、それでは大会の振り返りとして不十分なものになる。メドベージェフの試合態度に言及する必要があるだろう。
今大会で「観客を敵に回した」メドベージェフの言動
決勝の舞台であるロッド・レーバー・アリーナに入場するメドベージェフを迎えた拍手、歓声にはブーイングが交じっているように思われた。彼は観客を敵に回していた。一部のマナーに欠ける観客を「頭が空っぽ」と非難した。試合中、特に最大の集中が求められるファーストサーブとセカンドサーブの間に大声を挙げることに我慢がならなかったのだ。主張は間違いではないが、抗議の仕方が悪かった。