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36歳ナダルは史上最多21勝「隣で毎日助けてくれる人たちのおかげ」…では、メドベージェフはなぜ観客を敵に回すのか?
posted2022/01/31 17:30
text by
秋山英宏Hidehiro Akiyama
photograph by
Hiromasa Mano
全豪男子シングルス決勝は5時間24分のマラソンマッチとなった。長いだけではない。どのゲームも、どのポイントも、すべて密度の高い攻防だった。長時間試合になった理由は単純で、ラファエル・ナダルもダニル・メドベージェフも、とにかく1ポイントをおろそかにしなかったからだ。
GSタイトル単独首位vs史上初の四大大会連覇
前人未到の記録が懸かる決勝だった。ナダルには単独歴代1位となるグランドスラム21個目のタイトルが、メドベージェフには昨年の全米からの四大大会連覇が懸かっていた。オープン化(プロ解禁)以降、四大大会初タイトルから2大会を連覇した男子選手はひとりもいなかった。
記録を作るためにコートに立つのではないとしても、勝利に飢えた両者の戦いは白熱した。だれもが決まったと思うショットが決まらなかった。ツアー屈指の脚力と予測力、ボールへの執念を持つ両者がすべてのボールを追い、形勢逆転をねらって質の高いボールを返した。1ポイントに要した平均ラリー数は5.56本。「3球目攻撃」を理想とする男子テニスで、これだけ1ポイントが遠い試合は珍しい。ナダルの今大会7試合の平均が4.4本だから、この試合では計算上、すべてのポイントでもう1本長くラリーが続いたことになる。
ナダル「超疲れている。優勝のお祝いもできないくらい」
試合はもつれにもつれた。中盤以降、デュースに持ち込まれるゲームが増え、デュースを6回も繰り返すロングゲームも第3セットと最終セットに一度ずつあった。
最初の2セットを落としたナダルには、ストレート負けのピンチがあった。第3セット2-3からのサービスゲームで0-40と追い込まれたのだ。ナダルが試合後、この窮地を振り返っている。
「最後まで信じていたかった。自分にチャンスを与えたかった。ただただファイトし、それで解決策を見出せると信じていた。運もあったと思う。でも同時に、ツアーに戻ってテニスを続けるチャンスを得るために、僕はファイトし、頑張った」