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五輪直前に選手を襲撃、犯人は“ライバル選手の夫”…フィギュア界の最大スキャンダル「ナンシー・ケリガン襲撃事件」とは
posted2022/02/03 11:03
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by
Getty Images
オリンピックは選手にとって4年に一度の特別な舞台だ。誰もがそのリンクに立つ姿を思い描き、日々練習を重ね、よりよい将来を、成績を志す。
それでも出場できる人数は限られている。激しい競争が繰り広げられるが、今日のほとんどのスケーターは、フェアな態度を貫く。代表に入れなくても、選ばれた選手を祝福し、代表入りした選手も選ばれなかった選手を思う。
だが、五輪代表選考を巡り、思いがけない事態が起きたことがある。1994年、リレハンメル五輪の代表を巡っての、アメリカの話だ。ナンシー・ケリガンが、代表選考を兼ねた全米選手権の会場内で殴打される事件が起きたのである。
アメリカ五輪代表の有力選手が何者かに襲撃される
ケリガンは1992年アルベールビル五輪の銅メダリストであり、同年の世界選手権銀メダリストであった。アメリカ女子を代表する1人として、リレハンメル五輪代表の有力選手だった。
しかし、会場で練習を終えたケリガンは、何者かによる暴力を受け膝を負傷する。そのため、大事な五輪選考大会にもかかわらず欠場を余儀なくされたのだ。
ケリガンが不在の中、優勝したトーニャ・ハーディングと2位のミシェル・クワンが2枠だった代表の座を射止めた。ハーディングは伊藤みどりに続く、女子史上2人目のトリプルアクセル成功者として知られる。1991年の世界選手権で銀メダルを獲得し、1992年アルベールビル五輪に出場、4位の成績を残している。ただ、五輪前シーズンの1992-1993シーズンは調子が上がらず世界選手権の代表にもなれなかった。それを受けての、五輪シーズンだった。
衝撃事件の犯人は「ライバル選手の夫」?
それ自体が衝撃だった事件は、このあと、さらに大きな衝撃をもたらすことになった。捜査の末、容疑者として逮捕されたのはハーディングの元夫らだったからだ。