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《春高バレー最長身210cm》体をぶつけるのが嫌で…サッカー少年だった牧大晃がバレーボールと出会った日「変われたのは淵崎先生のおかげ」
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byAFLO SPORT
posted2022/01/13 11:01
春高バレーではベスト8で姿を消したものの、圧倒的な高さを武器にインパクトあるプレーを披露した牧大晃(高松工芸高3年)
昨年と同じベスト8に終わったが、牧自身は大きな成長を示した。主将、エースとしてのリーダーシップも、プレーも。
昨年は徹底的に狙われてサーブレシーブを崩されたり、サーブレシーブ後に不十分な体勢で打ったスパイクが捕まるシーンが多かったが、今年はそうした場面が少なかった。
スキルが上がったことと、意識の変化のおかげだ。昨年8月に高校生でただ一人、日本代表合宿に参加した時のこと。セッターの藤井直伸(東レアローズ)に、「サーブレシーブの返球が低いから、トスが上げづらい」と言われた。
「自分がもうちょっと高く上げて、余裕を作ってあげないといけないんだなと、初めて気づきました」
それはセッターだけでなく、その後スパイクに入る牧自身の余裕にもつながる。そうした気づきにより、サーブレシーブや守備から大崩れすることが少なくなった。
だが「まだまだ」だと牧は言う。目指しているのは“世界”だからだ。
「海外でナンバーワンになるためには、まだまだ高さも足りないし、レシーブ力も足りない」
「高さが足りない」の真意
「高さ」と言うのはジャンプ力のこと。ブロックの上から豪快にスパイクを決める場面もあるが、190cm台の選手が多く、ブロック力のある鎮西高の畑野久雄監督はこう語った。
「(牧は)大きいわりに高さ(ジャンプ力)はそれほどないから、ちゃんとタイミングを合わせて跳べば捕まると思っていた。実際、上から打たれたボールはあまりなかった」
牧の最高到達点350cmは高校生としては規格外だが、210cmという身長を考えれば、まだまだ伸ばせる余地がある。
高松工芸高の淵崎龍司郎監督(33歳)は、「高校に入ってきた頃は小学6年生ぐらいの体つきで、それからトレーニングを重ねてきて、やっと少し筋肉がつき始めたところ。(高校で)体重は10kg以上、最高到達点も15cmほど上がりましたが、これからもっとフィジカルトレーニングや、食事、睡眠の自己管理を重ねれば、まだまだジャンプ力は伸びると思います」と言う。
中学1年の夏にバレーを始めてからまだ5年半。順調な成長と言えるだろう。アウトサイドとしてあらゆるプレーをこなし、今大会はサーブが本調子でなかったものの、スケールの大きなスパイクは圧巻だった。淵崎監督も「210cmにしかできないオフェンス面でのプレーは、僕も見ていてワクワクする」と言う。この先には期待感しかない。
奇跡のような縁が、今の牧を作り上げてきた。