牧を育てるようになってから、淵崎監督は海外リーグの映像を見たり、経験豊富な指導者に積極的に話を聞いた。日本代表の主将・石川祐希（パワーバレー・ミラノ）を育てた星城高の竹内裕幸前監督には、「英検とかもやっておいたほうがいいよ」とアドバイスされた。

　牧の心が逃げそうになった時には、「お前は本当にそれでいいのか？　世界にそんなプレーヤーはいないぞ」といった言葉で揺さぶった。

　高校最後の試合を終えた牧は、「自分が一番変わることができた3年間だった。変われたのは淵崎先生のおかげ。先生の指導で精神面や性格面を改めてもらったから、この舞台で、決めることができた。1年生の頃は本当に内気で、トスを呼んだり、コート内でコミュニケーションを取ることもできなかったけど、チームを引っ張れるようになった。すごい先生だなーと思います」と感謝した。

　海外に行きたいという願望は強いが、「海外でやるにはもっとトレーニングをしっかり積まないといけない」と、今後も日本で、世界で戦える体作りと経験、スキルを積み上げていくつもりだ。

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　牧との濃厚な3年間を終えた淵崎監督は言った。

「後悔はないというか、やり残してしまったことはありません。でも一番は、彼がもともと持っていた人間性があったから、心に響いてくれたところもあると思うので、彼の素質と努力の結果、ここまできたんだろうなと感じます。日本でも、海外でも、必要とされる選手を目指して、これからも謙虚に努力を続けて欲しいなと思います。僕はもう、あとは楽しみしかないですね」

　関わるすべての人が、一緒に壮大な夢を見たくなる。物静かで控えめだけれど、牧には不思議とそんな魅力がある。これからもきっと、いろいろな人を巻き込みながら、夢へと一歩一歩、近づいていくのだろう。