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「泣いてんじゃねえ。帰れ!」オカダ・カズチカの辛辣な言葉の真意とは? 清宮海斗は“対抗戦の屈辱”をバネに飛躍できるか
posted2022/01/12 11:01
text by
原悦生Essei Hara
photograph by
Essei Hara
1月8日に横浜アリーナで行われた新日本プロレスvsプロレスリング・ノアの対抗戦のメインイベントは、オカダ・カズチカが清宮海斗にレインメーカーで止めを刺して試合を終えた。もしこれがモニター上の格闘ゲームだったなら、一見してポイントは一進一退、体力ゲージの減り方もほぼ互角、ということになるだろう。しかし現実には、両者の間には埋めがたい差があったように思える。
オカダ、棚橋弘至vs武藤敬司、清宮のタッグマッチで、オカダは清宮の繰り出す技を避けることなく、やりたいようにやらせた。「やらせた」という表現が正しいかどうかはわからないが、筆者にはそう見えた。
ドロップキックもエルボーもスープレックスも、「清宮やるじゃないか」と一部の観客の目には映ったかもしれない。だが、清宮が背後から放ったドロップキックは見た目ほど効果的ではなかった。ジャーマンスープレックスやタイガースープレックスにも、オカダは逆らうことなく投げられてみせた。
「やらせ過ぎだよ、オカダ」と思った観客もいるだろう。相手に十分やらせた後で、オカダは「もういいだろう」と言わんばかりに、清宮が「体感したい」と語っていた望み通りのレインメーカーをぶち込みKOした。
「泣いてんじゃねえ。さっさと帰れ!」
“勝って当然”のオカダは、棚橋と共に勝ち名乗りを受けた。まだ清宮はエプロンで号泣していた。「泣いてんじゃねえ。さっさと帰れ!」とオカダは清宮に近づいて見下した。清宮は越えられない大きな差を感じてしまったかのように、武藤に支えられて控室に戻った。
「それはもう見た人が感じてください。ボクが言うとね、ちょっとひどいことになってしまうかもしれないので。それぐらい差を感じたと思いますし、あんな泣いている場合じゃないよって。10年前も全日本と合同興行をやって、その時は中邑(真輔)さんと組んで、今年、50周年では棚橋さんと組んだ。じゃあ10年後はどことやって誰と組んで、っていう風になると思いますし、そういう思い出ができただけかな、と」
新型コロナウイルスへの対応で収容人数の半分以下とはいえ、横浜アリーナのチケットは完売。客席の盛り上がりにはいくらか感慨深げだったオカダだが、清宮に対してはなお厳しい言葉を並べた。