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「2ラウンド目に決めてください」RIZINシバター戦の“談合疑惑”の核心とは? 久保優太は謝罪「神聖なリングを汚してしまった」
text by
布施鋼治Koji Fuse
photograph byRIZIN FF Susumu Nagao
posted2022/01/04 17:04
試合開始1分過ぎ、シバターの右フックを被弾する久保優太。「2ラウンド目から本気で」という“談合”が事実だとすれば、この攻撃に面食らったことだろう
そして1月3日、“青汁王子”こと三崎優太氏によるYouTubeのライブ配信に電話出演した久保は「試合をやることが最優先」という情に流される形で、団体を通さずシバターとの直接のやりとりの中で話を進めたことを明かし、ネット上に出回ったLINEのスクリーンショットが本物であることを認めた。4日には、自身のYouTubeに動画をアップし、「シバターさんの陽動作戦に引っかかり、100%の気持ちを作れなかった」「RIZINの神聖なリングを汚してしまった」と謝罪。試合終了直後、久保は「どうしてこうなるの?」という驚きの表情を浮かべていたが、2Rまで試合が進むことを前提に闘っていたのであれば、それも納得できる。
曖昧になる「リアルとフェイク」の線引き
むろん双方の意見は180度食い違うだけに、今後RIZIN、あるいは試合を裁いたJMOC(日本MMA審判機構)による綿密な検証が必要になってくるだろう。ここで抜本的な解決策を見出さなければ、第2、第3の談合疑惑事件が発生しても不思議ではない。
振り返ってみれば、最近はインターネット配信局制作のリアリティ系番組でも、リアルとフェイクの線引きが曖昧な部分が多々見受けられる。視聴者に新たな刺激を与えるために、制作者側に「境界線が見えないからこそ面白い」という演出意図があるのかもしれない。YouTubeに至っては、マスの関心を引きつけるために、度を超えた、ややもすると法に触れるパフォーマンスに走る輩も出てきた。
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シバターvs久保は大晦日ならではの飛び道具といえる、人気YouTuberと元K-1王者の異種格闘技戦だった。試合前の挑発やアングル作りは試合を盛り上げるためには不可欠なのかもしれないが、節度がなければあらぬ方向に試合そのものが暴走してしまっても不思議ではない。この一件について付け加えるなら、主催者と選手側の考える“節度”に温度差がありすぎたということか。
久保のカミングアウトを受け、シバターは自らの“台本”そのものがフェイクであると主張して開き直った。
「なにやってるんだ、久保。そんなの、そのYouTuber(シバター)が動画や試合で使う常套句じゃないか。久保、そいつの試合見たことないのか。そいつはいつも試合前『お金積むんで負けてください』とかやってるぞ。まんまと引っかかって、なんで負けてるんだよ」
まるで他人事。シバターはフェイクにフェイクを掛け合わせるという異次元を演出していたというのか。大晦日の『RIZIN.33』は、扇久保博正のトーナメントでの活躍や、朝倉未来と斎藤裕の再戦など好勝負が続出した。それだけに、今回の騒動が水を差したことは残念でならない。シバターvs久保優太は、不名誉な形で格闘技界の事件史に名を連ねてしまうのだろうか。
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