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三浦孝太「格闘技でキングに」 サッカーボールキックで勝利した“カズの息子”の実力は本物か? RIZINデビュー戦で見せた“明らかな才能”とは
posted2022/01/06 17:03
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph by
RIZIN FF Susumu Nagao
父親が“キング・カズ”三浦知良というのは、いったいどういう気持ちになるものなんだろうか。反発したくなるのが普通ではないか。「親父は親父、俺は俺」と、どうしたって言いたくなる。
しかし三浦孝太は、父の存在と周りの反応を受け入れた。だからこその“大晦日デビュー”だった。
三浦知良の次男として、2002年に神戸で生まれた。そうか、と思う。カズがヴィッセル神戸に所属していた時代だ。
少年時代はサッカーに打ち込みつつ格闘技も好きだったという。中学生からボクシングを習い、高校を卒業すると元オリンピックレスラーである宮田和幸のMMAジム・BRAVEの内弟子となった。RIZINにも選手を参戦させている名門だ。
宮田からの話があり、RIZINは三浦のデビュー計画を立てる。“カズの息子”はRIZINとしても願ってもない話題性だ。といってただの練習生に試合をさせるわけにもいかない。そろそろいける、とゴーサインが出たタイミングが、2021年の大晦日、さいたまスーパーアリーナ大会だった。
とはいえ三浦にはアマチュアでの試合経験もない。レベルを考えると、プロで活躍中の選手にぶつけるわけにはいかない。扱いとしては“プロデビュー”だが、試合は3分3ラウンドの特別ルールとなった。対戦したのはYUSHI。ホストによる格闘技大会でチャンピオンだったという男だ。おそらく“カズの息子の相手役”でなければRIZINからのオファーはなかっただろう。
逆に言えば、RIZINは“トッププロ”のためだけの舞台ではないということだ。もちろん格闘技にしっかりと取り組んでいることが大前提だが、そこに話題性とドラマ性があれば新人でもスポットを当てる。
両親が見守る中で見せた、アグレッシブな闘い
好きで格闘技を始めた以上、この待遇がどんなものかを本人も分かっていた。RIZIN大晦日の晴れ舞台は、自分の実力で掴んだものではないと。
「勝つのはもちろんですけど、盛り上げないといけない。盛り上げるために自分の名前がそういうふうに(父と絡めて)使われてしまうのは仕方ないですね。まだ実力もないですし。そこは望むところです」
取材されてそう答えるだけの“強さ”があったとも言えるだろう。リング上でも臆するところはまったくなし。両親がリングサイドで見守る中、アグレッシブな闘いを展開してみせた。
打撃の打ち合いから相手のタックルにカウンターでフロントチョーク。三角絞めから腕ひしぎ十字固めへ移行。スタンドに戻ると、立ち上がろうとするYUSHIの胸あたりを左足で蹴り飛ばす。そこから追撃のパンチでレフェリーストップ。1ラウンド終了のタイムと同時、3分ちょうどのフィニッシュだった。