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「箱根駅伝→世界で戦うにはどんな練習が必要?」駒大“最強ランナー”田澤廉21歳に“現役引退”大迫傑30歳が初対面でアドバイスした中身 

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涌井健策(Number編集部)

涌井健策(Number編集部)Kensaku Wakui

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photograph byAsami Enomoto

posted2022/01/02 17:45

「箱根駅伝→世界で戦うにはどんな練習が必要?」駒大“最強ランナー”田澤廉21歳に“現役引退”大迫傑30歳が初対面でアドバイスした中身<Number Web> photograph by Asami Enomoto

東京五輪を最後に現役を退いた大迫傑(30歳)と駒大エース田澤廉(21歳)の初対談が実現した

「僕も大学生の時はそんな感じでしたね。大きく変わったのは、“感覚”から“計算”になった時。ナイキのオレゴンプロジェクトに入ってからです。このタイムが欲しいから半年間かけてこの練習を、このタイムで、これくらいやっていくという思考に変わったんです。おそらく今は大八木さんもそういう考えで田澤君を指導されていると思うけど、大学卒業した時に、感覚だけじゃなくて、ある程度は自分で計算することが必要になると思う。試合で1万mを28分10で走りたいのに1000mを2分50で10本でやったら遅いじゃないですか。そういうことですよね。じゃあ27分30で走るならどういうトレーニングが必要なのか、ということ。たぶん、今の田澤君は情報をインプットしている時だと思うんだよね。これからもっともっと体も分かってくるし、自分の目標にとって『練習で必要なタイム』というのも大学4年間を通して大八木さんに教えてもらうことで分かってくると思います」

 田澤も「大迫さんの考えていることと、自分の考えがほとんど違いません」と言いつつ、こんな風に語った。

「今は大八木監督が大迫さんがおっしゃってくれた部分をちゃんと考えて自分に指示してくれていると思います。この前も2分45を切って1000mを8本、それにプラス400mを2本やったんですけど、監督がちゃんと僕の目指すもの(世界陸上の標準記録)を考えてくれているのがわかるというか。でも、やっぱり自分で考えなきゃいけない日が来るんだなって。実業団に行ったときに自分で考えて計算できるようになれば、もっと自分の体も分かって、いい方向に進んでいくんじゃないかなと思うようになりました」

1万m日本歴代2位「まじ嬉しいっす!」

 この対談を収録した約10日後、田澤は爆走した。

 12月4日の日体大記録会1万mで27分23秒44。これは昨年12月に相澤晃が出したタイムに5秒と迫る日本歴代2位、そして大迫の持っていた日本人学生最高記録を大幅に更新するものだった。さらに歴代最強留学生との呼び声も高い、東京国際大のヴィンセントにも先着している。

 レース後、田澤は興奮気味に取材に応じた。 

「まじ嬉しいっす! 今年の最大の目標だったので。さすがにぎりぎりいけるかどうか、先日の伊藤(達彦)さんのタイムを見ていても、自分も正直27分30秒くらいかな、と思ってたんです。だからこそ、このタイムは嬉しい。

 レースでは8000mでも9000mいっても、まだ(ペースを)あげれるぞって。でも確実に標準を切りにいかないといけないので、ラスト400mでガーっといったんですけど(実業団のケニア人選手には)勝てなかった。そのスプリントの能力はまだまだだなって。

 伸びしろですか? いっぱいありますよ(笑)。スプリントもそうです。自分でもまだまだいけると思ってますし、トラックではパリを目指すんで。世界と戦うのが目標なんで、ここからが勝負です。相澤さんの日本記録も1年後とか、オレゴンの世界陸上でもいける可能性があると思うので、全然いきますよ! まだ自分、抑えているので」

 田澤が大迫の言葉をどのように受け止め、どのように自分の競技生活にいかしていくのか。その答えは、今回の箱根駅伝、そして来季のトラックでしっかり見せてくれるはずだ。

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