「どっちかの団体が落ちたり、格闘技界が落ちたり、そうなったらやる意味がなくなってしまう。この試合が熱望されてから、K-1が悪く言われたり、逆もあったと思います。僕の試合のことでK-1が悪く言われて、K-1ファイターたちにも迷惑をかけてしまった。悲しかったし悔しかったと思います。僕はそれが一番嫌だった。K-1、RISE、RIZIN、他の団体、みんなが“上がる”ものじゃなければ意味がない」

　那須川が武尊に対戦をアピールしたのは、6年前のことだ。対戦が決まらない中で、武尊やK-1陣営に「逃げるな」、「なぜやらないんだ」といった声、というより罵声も上がった。SNS時代だから漠然とした雰囲気ではない。リプライやダイレクトメッセージで直に突き刺さる。だが結果として誰も逃げなかったのである。対戦が決定したことで、それがはっきりした。

「天心から逃げた」という声も寄せられるなか、武尊は実現に向けて交渉を続けていた　©Norihiro Hashimoto

「ディズニーとユニバ」はなぜ交わったのか

　両者の住む世界、進んできた道が違うことは、最初に対戦をアピールした那須川も分かっていた。RISEのチャンピオンというだけでなくRIZINにも参戦し、知名度は全国区に。キックボクシングをやり切って、2022年にボクシングに転向することも決めていた。武尊はK-1一本だ。

「ディズニーとユニバ（ユニバーサル・スタジオ）くらい交わらない世界だった」

ボクシング転向の時期を遅らせて、武尊との「世紀の対決」を承諾した那須川　©Norihiro Hashimoto

　那須川は会見でそうコメントした。このところは「決まったらやる」というスタンスになってもいた。とはいえ彼も大きな決断をしている。当初のプランは大晦日にRIZIN卒業マッチ、来年4月2日にRISEでキックボクシングラストマッチというもの。

　明確なタイムリミットがある中で、大晦日に大阪ドームで対戦するという計画もあったと榊原。さいたまスーパーアリーナで開催されるRIZINとは別に、同日別会場で「中立のリング」を作ろうというわけだ。しかしこれは実現しなかった。那須川は、大晦日にはRIZINのファンに試合を見せたいという気持ちが強かった。

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