濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
「ディズニーとユニバくらい交わらない世界だった」那須川天心vs武尊がついに実現…夢の一戦は究極の“ほこたて対決”に?
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph bySusumu Nagao
posted2021/12/27 17:15
日本中が待ち望んだメガマッチがついに決定。武尊は「存在を恨んだ時期もあったけど、天心選手がいたからここまでやってこれた」と感謝を口にした
ならばと榊原は大胆な方向転換に出る。那須川の“キックボクシング引退、ボクシング転向”そのものを遅らせようというのだ。
「チーム天心にはだいぶ無理を言って、人間関係がおかしくなる手前くらいまでいって、最終的にみんなが理解を示してくれました」(榊原)
RISEは「那須川天心キックボクシング最終戦」という興行の切り札を失うことになる(試合自体は行なわれる)。ボクシングデビューも少し遅れるだろう。そうしたことも含めて、那須川サイドは“6月決戦”に合意したのだ。
最強の矛(武尊)vs最強の盾(那須川)の構図に?
武尊も那須川も団体の“顔”である。あらゆる意味で時間がかかって当然のマッチメイクだった。それでもお互いに歩み寄り、あるいは譲歩しての試合決定だ。逆に言えば、そう簡単には決まらない、どちらにとってもリスクの大きい一大決戦だからこそ、ファンも待ち焦がれたのである。
しかも時間がかかればかかるほど、両者の価値は高まっていった。会見で那須川が語ったように、対戦アピール以降、どちらも負けていないのだ。那須川はキックボクシング、MMA、ミックスルール合わせて公式戦45連勝。武尊も敗戦は新人時代の1つだけ、計40の勝ち星を積み上げている。
武尊も那須川も、格闘技界が生み出した最上級のファイターと言っていい。武尊はKrushから新生K-1旗揚げ戦に出場。那須川はRISEとともにRIZINへ。格闘技の新たな時代を切り拓き、背負ってきた。単に“強い選手”というだけではなかった。
試合も、ただ勝つだけではない。那須川は現役ムエタイ王者をバックキックでKOするなど多彩なテクニックで観客を魅了する。武尊は誰が相手でも前に出る試合が身上。パンチの嵐に巻き込み、ねじ伏せてみせる。
会見で武尊は「気持ちでは世界の誰にも負けない」と語った。気持ちで上回るとは、試合中の具体的な局面で言えば前に出ることだ。打ち合いになった時、あるいは相打ちになった時には前に出る選手が勝つ。それが武尊の信念なのだ。“信仰”と言ってもいいかもしれない。それくらい、彼は常に前に出て相手を倒してきた。