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プロレス写真記者の眼BACK NUMBER
「戦いがないと生きていけない」林下詩美を追って柔道からプロレスに転身…“闘争心の塊”舞華が「もっと私を見ろよ!」と叫ぶワケ
text by
原悦生Essei Hara
photograph byEssei Hara
posted2021/12/27 17:05
赤いベルトの女王・林下詩美をライバル視する舞華。ともに九州出身で、柔道という同じルーツを持つ
「普通の女の子に…」と願った父も娘の活躍に夢中
東京五輪の柔道はテレビで見ていたという。プロレスラーとして活躍する舞華だが、柔道に未練はないのだろうか。
「オリンピック選手は一握りですし、憧れでしたけれど、自分がなれるとは思えなかった。強いヤツは本当に強いんです。私はいつも負けていた。でも、柔道をやめたところで、戦いのない自分の人生を考えたとき、『ああ、生きていけないわ』って思ったんです。もちろん社会の中にも戦いはあると思うんですよ。でも、ずっと体と体でぶつかってきた人間なので、それがなくなるなんてありえなかった」
プロレスラーになると告げても、母は反対しなかった。しかし父は「普通の女の子になってくれ」と思っていたようだ。
「実業団の頃から、よく言われました。『彼氏がいるなら連れてきなさい。彼氏を作るなら酒が飲める人』って。両親ともお酒が好きなので。きっと父親は血がつながっていないぶん、過保護なんでしょうね」
舞華がプロレスラーになった後も、「なんで舞ちゃんがやられているところを見なくちゃいけないの」と父親は福岡大会での試合観戦を拒んだ。しかし今では逆に“どハマリ”してしまったようで、YouTubeや有料の放送を見て舞華を応援してくれているという。
プロレスに熱中している舞華だが、今後のことも考えてはいるようだ。
「プロレスをやめた後、やりたいことが見つからなくて。でもジムとかお店を持ちたいなとはぼんやりと思っています。いざとなったら、お金持ちと結婚するかな(笑)。理想のタイプは、身長180センチ以上で、体重は90から100キロ。マッチョで男らしくて、そして浮気しない。しかも優しくてお金を持っている人! でも私、男運ないからなあ……」
この話をジュリアにしたところ、「舞華は無理だね。ろくな男と付き合わないね」と言われたという。
「アイツが取れるなら私も」女王への強烈なライバル心
ベテランのような雰囲気も感じさせる舞華だが、プロレスのキャリアはわずかに約2年半だ。
「この短い間にも、いいことがいっぱいあり過ぎましたね。DDMに出会えたこと。ベルトは取れなかったけど、林下詩美に勝てたこともうれしかった。アイツに認められたこともうれしい」
それでも舞華は現状にまったく満足していない。
「不満ですか。『もっと私を見ろよ!』ってことですね。スターダムのスタッフにしろ、東スポや週プロの記者にも、もっと私を見ろよ、と。悔しいんですよ。私以外の人がインタビューされていると、『今、取材しなかったことを後悔させてやるぞ』って思うし、ポスターを見ても『なんで私、大きく載っていないの』って思う」
そんな悔しさが舞華のバネになっている。12月に発表された東京スポーツの「女子プロレス大賞」では、ライバルの林下が初受賞を果たした。
「来年の目標は女子プロレス大賞。また先を越されたけれど、アイツが取れるんだから私だって取れる。いつもアイツが先に行っている。マジで悔しい。2022年はアイツを越えて、テッペンに到達したいです」
(林下詩美編に続く)
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