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格闘技PRESSBACK NUMBER
慶應プロレス研究会“唯一の女子学生レスラー”無村架純が“男子相手”に闘う理由「木村花さんみたいに」《特別フォトインタビュー》
text by
門間雄介Yusuke Monma
photograph byTakuya Sugiyama
posted2021/12/27 11:02
慶應プロレス研究会に所属し、“唯一の女子レスラー”として活動する無村架純
「見た目の派手さは意識しています」
2021年2月に初めてリングに立ったが、このときは先輩選手に付き添うディーバという役回りだった。
試合デビューは7月。
実戦経験に乏しいことは自覚しているし、まわりには運動系の部活を経てきた男子選手が多いので、劣等感すら抱くことがある。
しかしリングに上がった彼女は堂々としていて、誰よりもふてぶてしい。そのせいか実際の身長よりもずっと大きく見える。際立つのはその表現力だ。
「運動能力ではまわりにかなわないので、私は表現力で勝負していかないとなって。だから見た目の派手さとか、声を一生懸命出すとか、表情で気持ちを伝えるとか、そういうところはけっこう意識しています」
木村花にハーレイ・クイン…好きなものを詰め込んだコスチューム
ビジュアルに関しては、憧れのレスラーにインスパイアされたところが大きい。
「木村花さんを観て、そこからプロレスに興味を持ったので、どうしてもそのイメージが強いんです。あんなふうになりたいなって。だから派手でかわいいコスチュームを作って、体をちゃんと鍛えて、格好よくやらなきゃなという強迫観念があります」
KWAには他に女子選手がおらず、コスチュームにこだわりを持つ男子選手もいなかったため(なにしろユニクロのブリーフ1枚で試合をする上級生がいるくらいだから)、彼女は女子用のコスチュームを制作する店を独力で探しだし、自分でイメージ図を描き、現在の華やかなコスチュームをオーダーした。木村花、紫雷イオ、WWEのアレクサ・ブリス、DCコミックスのハーレイ・クイン、X JAPANのhideなど、ビジュアルには自分の好きなものを詰め込んだ。
レスラーらしい体型を目指して筋トレにも励み、加入から試合デビューまでのあいだに7キロの増量を果たした。
「高校生のときはガリガリだったし、そうとう変わったと思います。増量することに抵抗はありません。露出する部分が多いから、そこがペラペラだとダサいなって個人的に思っているので。形から入るところがあるんです」
プライベートな事情を切り売りし、恥部や性癖までネタに
他の選手をいじり、野次にも即座に応じるマイクパフォーマンスは、彼女の頭のよさと優れたセンスを感じさせる。
学生プロレスが通常のプロレスとは異なる、いくつかのポイントのひとつが、実況と解説をマイクを通して観客に聞かせるところだ。それは単に試合の展開を追うだけでなく、選手たちのプライベートな事情を切り売りし、恥部や性癖までネタにする。彼女はそんな学生プロレスの、長く受け継がれてきた伝統にも適応している。
「笑いのセンスみたいなものが試される世界だと思うんです、学生プロレスって。そういう部分では、自分の面白いエピソードをどう生かしていくかも大事だと思ってます。ネタとしてちゃんと面白くしたいというか、プロレスでは勝てない部分を他で補いたいという謎の執着心があって(笑)。変にプライドが高くて、お笑いができないのは格好悪いですよね。私はプライドとかないし、面白いことが好きだし、たぶん学生プロレスと相性がいいんだと思います」
もしかしたら彼女のその表現欲は、これまでの経歴と多少関係したものなのかもしれない。彼女は高校生時代に地域密着型の地下アイドルとして活動していたからだ。《続く》
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