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壮絶事故から10カ月…タイガー・ウッズ奇跡のカムバックを支えた家族の愛と絆《勝利しか求めなかった男の変貌》
text by
舩越園子Sonoko Funakoshi
photograph byGetty Images
posted2021/12/21 06:00
交通事故以来、10カ月ぶりに「PNCチャンピオンシップ」で実戦復帰したタイガー・ウッズ。息子チャーリー君とのラウンドを楽しんだ
ウッズの奇跡的な復活を目にしたのは、今回が初めてではない。
左膝がボロボロの状態で2008年全米オープンを翌日のプレーオフで制し、そのまま倒れ込むように手術へ突入したウッズを目撃したとき、世界中のメディアが「再起不能なのではないか?」と書き立て、あのときは大勢のファンもウッズの選手生命の終焉を感じていた。しかし、ウッズはカムバックした。
2009年の暮れに勃発した不倫騒動は、理想的なウッズ像が崩れ落ちた未曽有のスキャンダルだった。「ウッズはゴルファーとしても人間としてもオシマイだ」と言われ、スポンサーもファンも、こぞって彼から離れていった。それでもウッズは、カムバックした。
膝の手術を4度も受け、2017年に受けた腰の4度目の手術は大がかりなものになった。激痛を伴ったリハビリ生活に耐えきれず、滅茶苦茶に服用した鎮痛剤の予想外の副作用は、世界を震撼させたウッズ逮捕劇を引き起こした。「今度こそ、ジ・エンドだ」と世界中が思ったことだろう。それでもウッズはカムバックした。
自宅の庭に倒れ込んだことも
こうして振り返れば、どれも奇跡の復活に見える。しかし、リハビリの途上では、裏庭で倒れ込んで動けなくなり、そのまま数十分間、地面の上にうつぶせで寝ていたこともあったそうだ。
そこに幼かった長女サムがたまたま通りがかり、「パパはどうしてお外で寝ているの?」と不思議そうに尋ねた。「いい子だから、誰か大人をここへ連れてきてくれないかい?」とウッズは頼み、助けが来るまでの間、さらに数十分間、うつぶせのまま、ずっと地面に寝ていたという。
そうやって、文字通り、地を這うような経験を何度も味わったウッズは、這ってでも生き残り、這いつくばってでも復活してみせると心に誓った。そして、その通り、数々のカムバックをやってのけた。
だが、そんなウッズのかつての復帰への強い想いは、長い間、自身が勝利するためのものだった。