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壮絶事故から10カ月…タイガー・ウッズ奇跡のカムバックを支えた家族の愛と絆《勝利しか求めなかった男の変貌》
posted2021/12/21 06:00
text by
舩越園子Sonoko Funakoshi
photograph by
Getty Images
米ツアーの非公式戦として開催された「親子大会」のPNCチャンピオンシップ(12月18~19日)は、今年2月の交通事故で右足に重傷を負ったタイガー・ウッズが、事故後、初めて臨む「復帰戦」として世界の注目を集めた。
戦いの舞台となったのは、米フロリダ州オーランドのリッツ・カールトンGC。ウッズと12歳の長男チャーリーくんは昨年大会に初出場して7位になり、そこであのとき戦う楽しさを知ったチャーリーくんは、「次こそは!」と勝利を目指して本格的な練習を開始した。
だが、その矢先、父親ウッズが交通事故を起こし、今年の大会出場は絶望視されていた。
事故直後は命さえ危ぶまれ、右足の切断さえ検討されていた。そんなウッズが、あの事故からわずか10カ月で今大会出場を決意し、試合の場に復帰できたことは、「奇跡」という以外に適切な表現が見つからない。
乗用カートを利用していたとはいえ、前日のプロアマ戦で18ホールをこなし、試合の2日間36ホールを戦い抜くことは、まだまだ完全回復からはほど遠いウッズの右足には、過酷な難行だったようで、ウッズがティショットや距離の長いセカンドショットを、すっかり腕を上げたチャーリーくんに任せる場面は多々あった。
しかし、チャーリーくんがグリーンを外して落胆した表情を見せると、ウッズはすかさず「寄せやすいアングルだから大丈夫!」と励まし、ウッズ自身がチップ&パットで上手にカバーするなど、父子は絶妙なコンビネーションでバーディーを重ねていった。
「幸運に感謝している」
最終日は出だしの3ホールで4つスコアを伸ばすと、7番から17番までは11ホール連続バーディーを奪って猛チャージ。17番でついに首位に並んだが、ジョン・デーリー父子に2打及ばず、結果は2位。
勝利は逃したものの、絶望視されていた大会出場が叶い、無事に36ホールを戦い抜くことができたことをウッズもチャーリーくんも心底喜び、満足の笑顔を輝かせていた。
「数週間前は、この大会に出られるかどうかもわからなかった。でも、僕とチャーリーはここにいる。その幸運に感謝している」
こんな日の到来を、あの交通事故の後、一体、誰が想像できていただろうか。
しかし、ウッズは、奇跡を待つのではなく、この復活を自力で実現させることを固く信じていたはずである。そうでなければ、こんな日はきっと到来していなかっただろう。