吉本以外の芸人がM-1で不利な理由

　30年以上『ラ・ママ』を開催し続ける理由について、「売れない子たちがもがく場所を作りたい」と明かした渡辺。その背景には、吉本とその他の事務所に所属する芸人たちの“ライブ事情”の違いがあった。

「吉本さんは劇場を持っているじゃないですか？　この差ってすごく大きいんですよ。吉本さんは同じ劇場、同じような客層の前で漫才を磨くことができますが、他の事務所はそれができない。ライブを増やしても劇場は違うし、客も入ったり入らなかったりで、同じネタをしてもウケ方が安定しない。だからひとつのネタを仕上げようとしても、基準を作れなくて修正が難しいんですよ。吉本さんがM-1や賞レースに強いのは、そういう理由もあります」

若手芸人の成長を見守ることは渡辺のライフワークになっているようだ　©Yuki Suenaga

　今となっては東京にもお笑い専用の劇場が多数あるが、以前は吉本ですら大きな劇場を持っていなかった。その中で大勢のお笑い芸人が腕を磨いたのが、渡辺が続けた『ラ・ママ』だった。本人は「ちょっと口を出しただけ」「場所を作っただけ」と謙遜するが、東京のお笑い界への貢献度は果てしなく大きい。

「若い子が懸命にお笑いに取り組む姿を見られるのはすごく面白いですよ。オードリーじゃないですけど、勘のいい子はちょっと何かを言うだけで劇的に変わったりしますから。その瞬間に立ち会えたとき、『ラ・ママ』をやっていて良かった、と思います」

　新型コロナウイルスの影響で中止が相次いだ『ラ・ママ』だが、12月17日に2年ぶりに有観客で開催された。今年はモグライダーが、そして来年以降もこの地下劇場出身の個性的なお笑い芸人たちが、M-1グランプリをおおいに盛り上げてくれることだろう。＜前編から続く＞

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