ハマ街ダイアリーBACK NUMBER
《昨年結婚、今年は子供も》DeNA東克樹に792日ぶりの復活勝利をもたらした、トミー・ジョン手術リハビリ期間の“自分との対話”
text by
石塚隆Takashi Ishizuka
photograph byKYODO
posted2021/12/13 11:01
TJ手術を経て、792日ぶりの勝利を挙げた東克樹。17年のドラ1で、故障前の18年には11勝を挙げている
東のテンションが上がったのは言うまでもない。
「実戦を積んできて、心のなかで大丈夫だって。コンディション的に行けるぞって」
また一軍行きを告げてくれたコーチの藤岡の存在は、苦しかった時期を乗り越えるのに大きな存在だったという。
「ボールを持ってキャッチボールするときから教えて頂き、そこで意識的に変化することが多かったんです。例えば体重移動であったり下半身の使い方など、僕にとってプラスになることが多くありました」
現役時代から人望の厚かった藤岡にかぎらずトレーナーなど多くの人たちが東の復帰に向け尽力してくれた。だからこそ結果で応えなければいけない。
9月28日のヤクルト戦(神宮)で一軍復帰予定の東は、チームの雰囲気に慣れるため数日前から帯同された。選手やスタッフは横浜スタジアムに訪れた東を笑顔で迎えた。まわりの人たちは口々に「お帰り!」「頼んだぞ!」と声をかけた。そのなかに、ともにリハビリに励んだ田中健二朗の姿があった。
苦楽をともにした同士の存在
ファーム施設ではないハマスタでの再会。ふたりにしかわからない時間と想い。東の復帰を誰よりも喜んだのは苦楽をともにした田中だった。東は真摯な面持ちで言う。
「健二朗さんの存在は本当に大きかった。支えになってくれたというか、健二朗さんの姿を見ながらいろんなことに取り組むことができ、問題なくリハビリをすることができたんです。なにもわからない状態で、これをやったら良くなったと教えてくれたり、毎日のようにお互いの肘の状態をチェックして、登板後の反応などいろいろ会話を重ねました。それに一軍で投げている健二朗さんは、僕に勇気を与えてくれたんです」
田中もまた東の存在が復帰へのモチベーションになったと語っており、あくまでも術後のリハビリではあるが、相乗効果があったことは間違いないだろう。そして、ふたりとも戦力として一軍に戻ってきた。また今年6月に同じTJ手術を受けた平良拳太郎は、彼らふたりが通ってきた道のりを信じ、今現在、着実に復帰に向け歩んでいる。
復帰登板となったヤクルト戦、東は初回、ヒット1本を許し計23球と球数を要したが、その後は4回まで無失点で乗り切った。しかし5回二死満塁のピンチを迎えると、外角低めの変化球を逆方向に打たれグランドスラムを喫してしまう。決して甘いボールではなかったが、本人いわく“失投”を仕留められてしまった。ヒリヒリとした勝負の世界、これが一軍のマウンドだ。