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「『人間じゃない』って言われます」“香川の怪童”浅野翔吾(高松商)が171cmで飛距離を伸ばせるワケ《阪神ドラ1森木から3安打》 

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菊地高弘

菊地高弘Takahiro Kikuchi

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photograph byTakahiro Kikuchi

posted2021/12/08 17:02

「『人間じゃない』って言われます」“香川の怪童”浅野翔吾(高松商)が171cmで飛距離を伸ばせるワケ《阪神ドラ1森木から3安打》<Number Web> photograph by Takahiro Kikuchi

取材にこたえる“香川の怪童”浅野翔吾(高松商)。身長171cmで飛距離を伸ばせる理由とは

 それまで浅野が受けていた応援は、ただの応援ではなかった。中学3年時、浅野が所属する高松市立屋島中学校が全国大会(全日本少年軟式野球大会)に出場することになった。横浜スタジアムで開かれる大会に参加するため、地元で遠征費のカンパを募ったところ、多くの地元住民が協力してくれた。浅野が当時を振り返る。

「屋島は応援してくれる人が多くて、行きつけの店に募金箱を置いてくれたりして、お金がたくさん集まったんです」

 そして、浅野はしみじみと「すごく温かみのある人たちです」と続けた。

 父の助言に同意した浅野は、地元の伝統校・高松商に進む。高松商は長尾健司が2014年に監督就任後、2016年春のセンバツで準優勝するなど復権を果たしていた。長尾が打撃指導に定評があることも、浅野にとっては決め手になった。

 入学してすぐの練習。フリー打撃で浅野がレフト方向に放った打球は96メートル先にそびえる数十メートルの高いネットを飛び越え、道路を挟んで建つ中学校の窓ガラスを直撃した。飛距離がさらに伸びた現在は、「中学校の屋根まで飛ぶようになったので、窓ガラスを割らずにすみます」と浅野は笑う。

なぜ、身長171センチの体で飛距離を伸ばせるのか

 なぜ、体格的に恵まれているとは言えない浅野は飛距離を伸ばせるのか。浅野は高校入学後、長尾から指導された「縦振り」を要因に挙げる。

「長尾先生に中村剛也さん(西武)のバッティング動画を見せていただいたんです。中村さんは高めの球も低めの球も、ボールに対してバットを縦に入れていました。この打ち方を意識するようになって、とくに低めのボールが得意になりました」

 ボールに対して縦にバットを入れ、打球に強烈なバックスピンをかける。そんなイメージでスイングすると、打球は面白いように飛んでいった。猛烈なフルスイングのイメージが強い浅野だが、こと本塁打に関しては意外と力感なく運ぶようなスイングが多い。今夏の甲子園・智辯和歌山戦で中西聖輝から放ったホームランも、低めのスライダーを「縦振り」してレフトスタンドに運んだものだ。

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