筒香はドミニカ共和国でMLBの野球だけでなく、現地の子供たちが伸びやかに野球を楽しんでいる現場にも行って、日本野球とのあまりにも大きな違いに驚き、少年野球を改革すべきだという問題意識を持つようになった。このときの「学び」は非常に大きかったのだ。

「大器晩成」という言葉があるが、打者・筒香嘉智は学んでから結果につなげるまでに、一定の時間がかかる。それだけスケールの大きな選手なのだ。

　ドジャースのマイナー時代に筒香は「まっすぐに対応できるようになった」と言っている。AAAクラスの大半はMLBでのプレー経験がある。プレッシャーのかからないマイナーリーグで、メジャーに近いレベルの投手に対応する中で、少しずつ手ごたえを感じるようになったのだろう。

　今年、タンパベイ・レイズはアメリカン・リーグ東地区で優勝している。筒香が移籍したロサンゼルス・ドジャースはナ・リーグ西地区で2位、ワイルドカードでポストシーズンに進出した。しかし3チーム目となったピッツバーグ・パイレーツはナ・リーグ中地区最下位。首位ミルウォーキー・ブルワーズとは34ゲーム差をつけられ、オールスター後には早々に「解体モード」に入っていた。

　ペナントレースのプレッシャーがない下位チームで、筒香嘉智はじっくりと「MLBの手応え」を確かめていったのだろう。

パイレーツとの1年契約を選択した意図

　シーズン終盤の活躍で、筒香には複数の球団が興味を示した。パイレーツも含め複数年契約を提示した球団が多かったようだが、筒香はパイレーツとの1年契約を選択した。その代わりに常時出場するという条件で。パイレーツでは一塁手での起用を想定していると言う。

　ここ2年間、筒香は経験したことのない試練の連続だった。甲子園で大活躍し、ドラフト1位でプロ入りしたエリートにとって、不成績でスタメンを降ろされたり、ファーム落ちしたりするのは、不本意極まりないことだっただろう。

　しかし、筒香はそうした試練も「良い経験」に変えて、復活しようとしている。

　筒香は毎年、中学時代にプレーした少年野球チーム「堺ビッグボーイズ」で、後輩の野球少年たちを前に話をする。MLBでの得難い経験を経て、筒香は今年、子どもたちにどんな話をするのだろうか。

#2に続く

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