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バルサ監督シャビが9年前に語っていた“選手の素質”「『そのサイズで中盤は無理だ』って。だけどみんな僕を手本にしている」
text by
横井伸幸Nobuyuki Yokoi
photograph byTakuya Sugiyama
posted2021/12/08 17:01
今年11月に古巣・バルセロナFCの新監督に就任したシャビ・エルナンデス
「結局1度ももらってないけどね。でも世界の人たちに認められているって感じるから、受賞しなくても十分幸せだよ。トロフィーを手にしたメッシが壇上で『シャビと分かち合いたい。彼もこの賞にふさわしい』って言ってくれたから、授賞式に3度足を運んだことも報われたし。それに、僕の目標はチームタイトルの獲得であって、欲しいのは個人タイトルじゃない。チームの成功の方が僕にとっては重要なんだ」
シャビとメッシ、そしてイニエスタ。身長170cm以下の3人が世界最強チームの核になっている現状は、実はバルサにとっても皮肉な状況である。カンテラは'70年代まで選手の体格を重視し、身長が低い者は門前払いにしていたからだ。
「僕の人生のうち10年間は耳にたこができるほど聞かされてきた。『お前は小さすぎる。その身体のサイズで中盤でプレイするのは無理だ』って。
ところがいまはどう? みんなイニエスタと僕をミッドフィールダーの手本にしてるじゃないか。ワンタッチでプレイすれば、身体が小さいからって止められることはないんだ。マークはされても、ボールが足下に来たらポンッと蹴って僕は前に出て行く。ディフェンスするのは不可能だ。
僕がフィジカル面で恵まれていないのは事実だ。だからこそ素早く頭を回転させる。その速さは、今日のサッカーでは、身体的な速さより重要だ。考えるスピードが僕と同じレベルで、さらにパワーもあったのは過去にたった1人、ジネディーヌ・ジダンしかいないね」
「でも、僕はこれでおしまいじゃない」
1月が終わった時点でシャビの公式戦出場回数は610に達した。クラブ史上最多であり、記録は今後も伸びていくだろう。だが一方で、32歳という年齢からしても彼はキャリアの終盤に差し掛かろうとしているはず。
それなのに彼のプレイは一向に衰える気配を見せない。
「自分のキャリアの中でも明らかに素晴らしい時を迎えているね。みんなに褒められ、チームに貢献していると言われ、満足しているよ。でも、僕はこれでおしまいじゃない。これからもチームの一員として努力し、試合ごとに全力を出していくつもりでいる。後ろから追い上げてきた若い連中が、そろそろ自分たちの出番だろう、って言い始めてるからね(笑)」
ベテランにしてなお意気盛ん。これからもシャビのリードでバルサは前へ進んで行く。