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《日本全体だと比率1%》難関を突破して夢を叶えた女性パイロットは、“超多忙”なのになぜラグビーのレフリーを? 

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大友信彦

大友信彦Nobuhiko Otomo

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photograph byJ-AIR

posted2021/11/11 06:01

《日本全体だと比率1%》難関を突破して夢を叶えた女性パイロットは、“超多忙”なのになぜラグビーのレフリーを?<Number Web> photograph by J-AIR

パイロットという仕事をこなしながら、ラグビーのレフリーにも挑戦する神村英理さん。日本代表としても5キャップを持つ(写真提供/ジェイ・エア)

 レフリーをすることがパイロットに、あるいはその逆に、役に立つこと、プラスになることはあるのでしょうか? その問いに、神村さんは「パイロットとレフリーには似ているところがあるんです」と答えた。

「私は一点集中になりがちなんです。選手のときもそうだった。全体が見えなくなりやすい。でもパイロットもレフリーも、細かいところにとらわれすぎずに視野を広く持つこと、全体の状況を把握することが求められるんですね。そこがすごく勉強になります」

 飛行中には膨大な情報を瞬時に処理しなければならない。コックピットにはそのための計器が数え切れないくらいたくさん並んでいる。正確な判断を下そうと、そのひとつひとつを凝視していたら、あっという間に何百メートル、あるいは何キロも進んでしまう。その間に、目視しなければいけない地上の様子は一変してしまう。気になることがあれば気を配りつつも、全体像を捉え続けなければいけない。木を見て森も見るのがパイロットとレフリーの共通点なのだ――そして、その意見を伝え聞いたマコウさんは「完全に同意」してくれた。

「苦手なことに取り組むのって面白いですし、勉強になる。成長できる。レフリーは究極の趣味だと思っています。仕事で学んだことをレフリーで生かしたり、その逆もあり、すごく面白いなと思います」と神村さんは言う。

 フルタイムで取り組むレフリーが増えるのは歓迎したいし必然だと思う。だけど、別の分野でプロフェッショナルのキャリアを積みながらレフリングを楽しむ人もいていい。それぞれのキャラクターのレフリーがいることで、レフリングもゲームも豊かになれる。

 目標は、国際大会を吹くことだという。

「選手としては、アジア予選で負けてしまって、世界で戦うことができなかった。もしも叶うなら、レフリーとして、世界を見てみたい、世界の戦いの場に身を置いてみたい」

 女性レフリーは少ない。10月に発表された国内のA級レフリーは、男性29名に対して女性は1名。こちらも女性パイロットの比率に近い。この数字を変えたい、閉ざされていた扉を開きたい――これまでいくつもの扉を開いてきた神村さんは、そんな思いでコックピットに座り、河川敷を走り、レフリングの予習でPCに向かうのだ。

 きょう、あなたが見上げた飛行機を操縦していたパイロットが、あすはあなたがプレーする(観戦する)試合のレフリーをつとめているかもしれない。

記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。

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