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《日本全体だと比率1%》難関を突破して夢を叶えた女性パイロットは、“超多忙”なのになぜラグビーのレフリーを?
posted2021/11/11 06:01
text by
大友信彦Nobuhiko Otomo
photograph by
J-AIR
「彼女のその意見には完全に同意するよ」
そう言ったのは、ラグビー王国ニュージーランドの、というよりも世界ラグビーのレジェンド、リッチー・マコウさんだった。2011年と2015年のラグビーW杯でともにオールブラックスの主将を務め、史上初の2連覇を飾ったラグビー王国の英雄は、現役引退後に華麗なる転身を果たした。
スパイクを脱いだレジェンドが次に握ったのは操縦桿、座った場所はコックピット。マコウさんは、ヘリコプターや飛行機を操縦する職業パイロットに転身したのだ。従事するのは主に遊覧飛行。ニュージーランドの雄大な景色――氷河、急峻な山岳、フィヨルドなどなど――を観光客に満喫してもらうのが仕事だ。
この夏、そのマコウさんにオンラインインタビューする機会を得た筆者は、そのちょっと前に、やはり元ラグビー選手の現役パイロットに聞いた言葉をマコウさんに伝えた。
「日本でラグビーのレフリーをしている女性から『ラグビーとパイロットの仕事は似ている』という言葉を聞きました。ゲームでもフライトでもたくさんのことが起こる。すべてのことに100%の対応ができなくても、それにとらわれすぎてはいけない。次のことに備えなければいけないと」
それを聞いたマコウさんは「その通りだと思う。完全に同意するよ」と言ったのだ。
「フライト中には、天候の変化などいろいろなことが起きるけれど、ひとつひとつのことを解決しようとこだわりすぎず、全体のことを考える必要がある。ラグビーの試合中も、自分の動きと、それがチーム全体の中でどう機能しているかを考えなければいけない。僕自身はゲーム中、苦しい場面になったときは、それをどう解決するかを楽しむようにしていた。パイロットの仕事も共通している。ピンチになってもパニックにならず、クールに考えることが必要なんだ」
ラグビーのレフリーとパイロット
マコウさんが共感した言葉の主は、女子トップレフリーのひとりにして現役のジェット機パイロットというふたつの顔を持つ、神村英理(かみむら・えり)さん(31歳)だった。
神村さんは2012年のアジア4カ国対抗、2013年のワールドカップアジア予選など15人制女子日本代表5キャップを持つ元ラグビー選手。ポジションはCTBだった。
現在の職業はJALグループ「ジェイ・エア」に勤務するパイロット。大阪伊丹を拠点に、札幌千歳、羽田、また幹線以外の、仙台や青森、山形、宮崎、鹿児島など地方都市を結ぶ便に乗務している。
そもそも、女性パイロットはどれくらいいるのか?
「少ないですね。私の会社にいるパイロット300人のうち女性は訓練生を含めて15人なので、5%ちょっと。これでも多い方で、日本全体だと1%と言われています」
政界以上のジェンダー格差だ。そんなパイロット生活に神村さんが入ったきっかけにはラグビーがあった。