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《日本全体だと比率1%》難関を突破して夢を叶えた女性パイロットは、“超多忙”なのになぜラグビーのレフリーを? 

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大友信彦

大友信彦Nobuhiko Otomo

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photograph byJ-AIR

posted2021/11/11 06:01

《日本全体だと比率1%》難関を突破して夢を叶えた女性パイロットは、“超多忙”なのになぜラグビーのレフリーを?<Number Web> photograph by J-AIR

パイロットという仕事をこなしながら、ラグビーのレフリーにも挑戦する神村英理さん。日本代表としても5キャップを持つ(写真提供/ジェイ・エア)

 パイロットを目指す生活は、違う楽しみをもたらしもした。

 神村さんの通った崇城大学は熊本にあった。そのころちょうど熊本で新しい女子ラグビーチーム「スウィーティーレディベアーズ」が結成され、プレーをする機会があり、その流れで、たまたまレフリーをすることになった。草の根ラグビーではよくあることだ。だが乗りかかった船というのか、責任感というのか、やるならやるでしっかりやりたいと思った神村さんは、2018年にレフリーの資格を取得した。

 元日本代表選手がレフリー活動を始めたという情報は日本協会審判部門にも伝えられ、ジェイ・エアに採用された2019年に、女子レフリーアカデミーの第6期生に選出された。自分の意志だったかどうかは定かではないが、女子トップレフリーへの道が開けた。

 パイロットという、多くの命を預かる特別な業務に就きながら、休日にはレフリーとしてピッチを駆ける生活が始まった。2020年はコロナ禍でゲームを吹く機会もなかなかなかったが、2021年は太陽生命ウィメンズセブンズシリーズの4大会、下部大会のリージョナルセブンズ関西大会、7月の全国高校セブンズ大会などを任された。

月に60~70回のフライト…両立はできる?

 しかし……パイロットとレフリーの両立に、難しいことはないのだろうか。

「まず難しいなと思うのはスケジュールの調整ですね。土日の関係ない職場ですし、リモートも利かない」

 パイロットの勤務は月に概ね20日。フライト回数は通常なら60〜70回というから、1日のフライト回数は3~4回となる。10時間ほどぶっ通しの勤務もあるという。

 現状、レフリー活動は「趣味」だ。トップチームに所属するレフリーらの多くは勤務先の理解のもと、社会貢献活動の業務としてレフリー活動を行っているが、神村さんは年休と有給休暇を組み合わせてレフリー活動を行っている。ラグビー協会の審判部門からは「この大会に行ける?」という問い合わせが頻繁に入るが、急なシフト変更はほぼ不可能。海外大会参加の打診があっても、通常の時期なら行けても、現下の情勢では帰国時に隔離期間が課され、勤務に支障をきたすため、受けられなかった。

「トレーニング環境も難しいんです。月に10日くらいは出張なので、決まったジムでトレーニングが出来ない。宿泊先の近くの公共ジムや、公園や河川敷でトレーニングしています。データも自分のガーミンのGPSデータと照らし合わせながら、あとは自分の感覚を頼みに強度をコントロールしています」

「それと、ケガをしちゃいけない。自分を追い込むトレーニングも必要ですが、疲労が残って操縦に支障があってはいけない。そのさじ加減が難しいです。日焼けひとつとっても、長い目で見ると健康状態に影響を及ぼすことがあります。航空身体検査は年に一度ありますが、一度引っ掛かってしまうと、復帰するのにとても大変です。 ずっと飛べる身体を維持することが大切なので、健康管理はとても気をつけています。その他の資格を維持するための審査も年に3回あって、これも大変なんです」

【次ページ】 レフリーは「究極の趣味」

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