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「お父さんのノリとは遊び仲間」から始まった鹿戸雄一調教師と若き天才・横山武史(22)との不思議な絆《エフフォーリアで天皇賞3代制覇》
posted2021/11/02 17:01
text by
平松さとしSatoshi Hiramatsu
photograph by
KYODO、Photostud
10月31日、東京競馬場で行われた天皇賞・秋(GI)を制したのはエフフォーリアだった。
「デビュー当初は体質面で弱いところがあったので間を空けながら使いました」
そう語るのは同馬を管理する鹿戸雄一調教師。
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「競馬へ行くと少し行きたがる素振りを見せたけど、全体的には上手にレースを運べる馬。1回使うごとに強くなっていきました」
エフフォーリアが天皇賞・秋を制するまで
共同通信杯(GIII)を制した後、ゆったりと間を空けて皐月賞(GI)に挑戦。
「上手に折り合ってくれたし、直線に向いた時の反応も良かったのでこの時点で早々に勝てそうだと感じました」
その見解に誤りはなく、秋には菊花賞(GI)を制するタイトルホルダー(2着)を3馬身も突き放してゆうゆうとゴールに飛び込んだ。
クラシック1冠目でこの差は決定的と思え、日本ダービー(GI)のタイトルも射程圏に入れたかと思いきや、そこではシャフリヤールのハナ差2着に惜敗した。それでもこの天皇賞・秋で歴戦の古馬勢を一蹴。3歳馬ながら由緒ある盾を掌中におさめてみせた。
鹿戸調教師「私には2人の師匠がいる」
美浦で開業する鹿戸調教師は1962年5月生まれで現在59歳。天皇賞・秋は初めての優勝だが、実は何かと縁のあるレースであった。
先述した通りエフフォーリアは3歳で戴冠したわけだが、このレースを3歳馬が制するのは実に19年ぶり。エフフォーリアの父はエピファネイアで、その更に父がシンボリクリスエス。このシンボリクリスエスこそが、19年前に3歳で天皇賞・秋を優勝した馬だった。ちなみに同馬を管理したのは後の1500勝トレーナーである藤沢和雄調教師。同師は当時、次のように語っていた。
「この年は東京競馬場の改修工事があったため、秋の天皇賞が中山競馬場で行われました。美浦から首都高を横断しなければ辿り着けない東京競馬場と違い、比較的近場の中山で開催されるという点は、3歳馬を送り込む身としては大きな決断材料になりました」
例年通り東京で行われていたらシンボリクリスエスは天皇賞・秋へは向かっていなかったかもしれない。そうなると、今回のエフフォーリアの偉業は19年以上の間が空く事になるわけだが、ではその前に3歳馬が優勝したのはいつかとみると、1996年のバブルガムフェローまで遡る。87年に3歳馬に再度門戸が開かれてからは初の3歳馬の戴冠となったのがこのバブルガムフェローなのだが、これもまた藤沢和雄調教師の管理馬だった。