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「お父さんのノリとは遊び仲間」から始まった鹿戸雄一調教師と若き天才・横山武史(22)との不思議な絆《エフフォーリアで天皇賞3代制覇》
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平松さとしSatoshi Hiramatsu
photograph byKYODO、Photostud
posted2021/11/02 17:01
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(左)21年天皇賞・秋を制したエフフォーリアと横山武史(右)09年天皇賞・秋を制したカンパニーと横山典弘
更に言うとエフフォーリアの父エピファネイアは14年の天皇賞・秋に挑戦したのだが、この時、優勝したスピルバーグを育てたのもまた藤沢調教師。この伯楽こそ、鹿戸調教師が「私には2人の師匠がいる」と語る2人のうちの1人であった。
「藤沢先生から『おめでとう』と言ってもらえたのが嬉しかった」
元騎手である鹿戸調教師が調教師を目指した際、何かと面倒を見てくれたのが藤沢調教師だった。シンボリクリスエスの現役時代、当時騎手だった鹿戸調教師は同馬の調教に何度も跨っていた。それが現在、エフフォーリアを管理するにあたって少なからずアドバンテージになっている事は間違いないだろう。
また、04年に天皇賞・秋などを制したゼンノロブロイは翌年イギリスに遠征してインターナショナルS(GI)に挑戦するのだが、この際現地で約1カ月調教をつけたのも鹿戸騎手だった。
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そして今回、藤沢調教師にとっては最後の天皇賞挑戦となったグランアレグリアをエフフォーリアで破って優勝してみせたのである。レース後「藤沢先生から『おめでとう』と言ってもらえたのが嬉しかった」と語る鹿戸調教師。良い恩返しになった事だろう。
鹿戸師を育てた久保田金造氏と名馬ニッポーテイオー
また、もう1人の師匠とは、騎手デビューを果たした当時、籍を置いた厩舎の久保田金造元調教師(故人)だ。同厩舎には1980年代に活躍したニッポーテイオーがいた。オールドファンなら郷原洋行元騎手(後に調教師、故人)との活躍がまぶたに浮かぶであろう名馬だが、鹿戸騎手はこの馬の調教にも跨っていた。
「普段は厩舎の先輩である蛯名信広さん(後に調教師、故人)が調教をつける事が多かったけど、私が指名される事もありました。函館記念を勝った時(86年)など、北海道遠征時はとくによく乗せてもらいました」
当時はまだGIホースになる前だったが、次のように感じたと語る。
「追ってからのスピードがケタ違いだったけど、だからといって掛かってガンガン行ってしまうような馬ではありませんでした。また、単なるスピードだけでなく、物凄いパワーもある馬でした。そして何よりも背中の感触が良い馬で、乗り味は抜群でした」
その後、ニッポーテイオーは天皇賞・秋を優勝(87年)。「あぁ、やっぱりこういう馬がGIを勝つんだな……」と感心すると同時に思った事があった。
「GI馬の背中を知る事が出来た。これは今後のホースマン人生において大きな経験であり財産になると思いました」