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《スケートカナダ優勝》王者ネイサン・チェンを襲った“コーチ不在”のハプニング…それでも「ぼくは大丈夫」と即答できた理由
posted2021/11/02 17:03
text by
田村明子Akiko Tamura
photograph by
Getty Images
10月29日から、カナダのバンクーバーで開催されたGPシリーズ第2戦、スケートカナダ。フリー演技を終えたネイサン・チェンは、一人で腰かけたキス&クライで得点を見ると何度か頷き、ほっとしたように胸の前で両手を合わせた。
その前の週、ラスベガスで開催されたスケートアメリカでは、チェンは過去3シーズン見せたことのないようなミスを重ねて総合3位に終わっていた。
「何が原因なのかは、自分でもわからない」
「でもまだパニックボタンは押しません」
そうコメントしたチェンは、大会翌日の月曜日、すぐにバンクーバーに飛んできた。現地のリンクで数日落ち着いて練習をし、このスケートカナダに挑んだのである。
10月29日のSPでは、4ルッツ、3アクセル、4+3トウループをノーミスで降りて106.72でトップに立った。シニアGPシリーズで2週連戦するのは今回が初めてだが、このスケジュールが幸いしたのだという。
「すぐに再び試合に挑戦するチャンスがあって、良かったです。次まで4週間待たなくてはならない、というようなことではなくて」
SP後の会見でそう口にしたチェン。あれこれ悩む時間を最小限にして、普段の自分らしい演技を再び見せたことでほっとしたのだろう。顔の表情も、普段の落ち着いたチェンに戻っていた。
アルトゥニアンコーチが巻き込まれたハプニング
ところが翌日のフリーでは、思いがけないハプニングが待っていた。コーチのラファエル・アルトゥニアンが、会場で設置されていたバブルの外に出てしまい、クレデンシャルをはく奪されたのである。